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医師から受け取った死亡診断書には、「心不全」と書かれていた。「あれっ! おかしい」とその時姉と顔を見合わせたのだが、父を早く家に戻したいという思いが強く、そのまま父親を家に連れて帰った。

葬儀の時、施設側から理事長、施設長、事務長の3人が弔問に来た。姉は顔も見たくないというので席を外した。母親は、冷静さを取り戻し、3人に向かって、「柩の前で、きちんと謝ってほしい。そして、2度とこのようなことがないように、利用者の命を最優先した介護をしてほしい」と毅然とした態度を取った。

3日後、施設に行って事務的なことを済ませた後、事故の説明を聞いた。そうしたら、施設長は、やむを得ない事故で施設に非はない。解剖もしていないので死因が溺れたものによるのかは明確ではないと言った。この言葉に怒りを感じ、許せないと思っているが、具体的にどんなことをしていいのかわからないという。

現在は、このようなことを相談する窓口がない。あっても、最後まで相談に乗ってくれる受け皿がない。介護保険制度で設置される苦情相談窓口は、このような問題をきちんと解決してくれるのだろうか。

 

 

 

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