老いの住まい NO.2
本間郁子
苦情相談窓口の機能
読売新聞に掲載された、各地で広がる市民オンブズマンという記事を読んだという人から1枚のファックスが届いた。
1年前に父親が亡くなり、ちょうど一周忌を済ませたところだという。家族が、ようやく父親の死を冷静に考えることができるようになったと書かれていた。
亡くなった時父親は73歳だった。パーキンソン病にかかり、歩行は困難だったが、食事は何とか自分で食べることができた。母親が介護していたのだが、その母親が体調を崩し入院することになった。父親はその間、ある老人保健施設に入居することになった。入居して2か月経ったころ、父親が入浴中に溺れた。救急車で病院に運ばれ、応急処置を取ったが数時間後に息を引き取った。
職員の説明によると、父親と一緒に入浴していた人が気が付いた時には、水面にうつぶせになっていたという。その時、職員は、他の利用者の入浴準備で脱衣所にいた。ほんの一瞬の出来事だったと言った。
病院の医師は、レントゲンを見て、「肺が白くなっている。水を飲んだことが原因で溺死だといえます」と家族に告げた。間もなく、警察官が来た。聞き取りが終わった後、家族に対して、「あまり問題を大きくしないほうがいいと思いますよ。後が大変ですからね」と忠告するような言葉で言った。母は、突然の出来事にすっかり動転し悲しむばかりで、警察官の言葉も頭に入らない様子、ただうなずいているだけだった。