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そこでそのグループに提示した課題は、「地域を歩いて高齢者が寄り集まっている所を探せ!」

参加者は、果たしてそんな所が本当にあるのか、半信半疑といった面持ちでした。その中に一人、私が内心期待していた通りの調査をしてきた人がいました。永平寺町の民生委員・島田美恵子さん(65)。公民館や地区の集会所や寺社といった公共施設でなく、地域のごく普通の場所(誰かの自宅とか、往来、商店など)を探し回った結果、驚くべし、わずか84戸の区域に合計12か所のたまり場を見つけてきたのです。内訳は特定の人の自宅が5か所、商店が3か所、そして往来が4か所。

島田さんが作った地図を見ると、84世帯がかなり密集しているため、ほとんどこの地区全体が「近隣」といった感じもします。それにしても「こんなにたくさんのたまり場があるとは!」と本人もビックリしていました。長い間この地区を担当してきたのに、今まで気づかなかったのです。

たとえば、自宅開放型のたまり場の常連は、3人から5人程度と小規模で、必ずしも「向こう三軒」とは限らず、むしろ相性のよい者同士が集まっているようです。しかも(島田さんのレポートによれば)、「料理・手芸などをおしゃべりしながら教える」生涯学習型の家や、「相談に乗り、面倒をよく見る」福祉センター型の家、「話題を引き出して、まとめる」懇談・サロン型の家、それにお遊び中心型の家と、ホスト役の個性や持ち味でたまり場の性格にも違いが出ていました。

おもしろいのは、食品店など3店のたまり場は、いずれも情報の拠点になっているだけでなく、体の弱い高齢客のため他店からまとめ買いをしてくれるといいます。文字通りの便利屋でした。加えて戸外にも4か所のたまり場が見つかりましたが、主に情報や野菜の交換場のようです。

島田さんはたまり場のついでに、地区の人たちの誰と誰がどんな助け合いをしているのかも調べました。

合計10組が各々、おすそ分けや除雪、子守り等をし合っていました。

調査の結果、島田さんは驚くべき事実に気づきました。「これらの助け合いの輪に男性がいない!」。女性にも孤立している人がいます。彼らはどうやって自分の安全を確保しようとしているのか、これが彼女の新しい調査対象になるはずです。近隣助け合いを進めるために、まずこんな調査をしてみることをおすすめします。

 

 

 

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