10%の自己負担に耐えられるか
介護保険制度はスタートしたばかり。施設長として大忙しでしょう。
今新しい制度へ移行する、その渦中にいるわけですが、ともかくこの制度をスタートさせることで頭はいっぱい。問題があれば、改善、改良していくほかない。正直いって不安を抱えながらの船出です。サービスの質を落とさないで、これまでのような事業を続けられるのか、年金収入だけで自己負担分を支払えるのだろうか、事業収支の見通しは? 人件費の削減をどう進めるか―あれこれ考え始めると頭がパンクしそうです(苦笑)。
特養経営にとっては、大転換期ですから、どういう具合に新制度に移行させていくか腐心されていると思います。長年、介護の現場に携わってこられた経験から、要介護認定についてどう考えますか?
率直に申し上げます。いちばんの問題は、痴呆症に対する評価、認定をどうするかということです。たとえば足腰は比較的しっかりしているのに、判断能力に欠けている人をどの程度にランク付けするか、きわめてむずかしい。歩行困難だとか、自分で歯を磨けないといった外見的な障害は、誰が見てもわかります。しかし、痴呆の程度を見極めるには、一、二回の判定では無理がある。本人の記憶力をチェックする検査項目はあるけれど、身体的な評価度に比べるとランクは低い。そのかい離をどうするのか…。
痴呆と身体の認定にかい離が
なるほど。一人ひとりの心身状態を正確、公平に判定するのは、口で言うほど簡単ではありません。審査する専門家によっても違うでしょうし。
一次審査のやり方は改善されたけれど、現実とのかい離をどう埋めるか、問題は残ったままです。体は元気なのに痴呆症のある老人を抱える家族の苦労は、ほんとに大変だと思います。しかも痴呆症は加齢と共に進む。また独居老人の場合、そのままにしておくと、生活そのものに支障が出てくる。自分一人で買物には出かけているけれど、一歩家の中をのぞいてみると、ゴミで荒れ放題の無残な暮らしをしている姿を何軒も見たことがあります。そんなお年寄りを放っておくわけにはいかない。身体介護だけに目を向けていると、大事なことを見失ってしまう。
介護報酬の価格体系について、経営者としてどう受け止めていますか。
重度の介護を必要とするケースについては、この価格水準ではやっていけないと思います。