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最も症状の重い「要介護5」では、月額三五万八三〇〇円の上限を設けていますが、独居老人の場合、身体介護から生活支援に至るまですべてのサービスをこの枠内で賄うのはむずかしい。

もうひとつ心配なのは、一〇%の自己負担のこと。差し当たっての軽減措置はあるにしても、本人にとってかなり重荷になると思う。年金収入が少ないため、十分なサービスを受けられない人が続出する可能性もある。

 

特養の経営については、どう見ていますか。

 

介護保険の施行で、経営はこれまで以上に厳しくなると予測しています。自治体から受けていた補助金が年々減っていき、いずれゼロになります。収入減をカバーするには、人件費を削減するしかないのでしょうが、パートを増やすとサービスの質は低下する。これまでのレベルを落とさないで、どう収支バランスを取るか―誠に頭の痛いところです。ただ、在宅介護は経営的に有利ですから、こちらのほうを拡充しながら、横浜にさまざまな介護拠点を数多く展開していきたい。

 

小さいことはすばらしい

―スモール・イズ・ビューティフル

もっときめ細かい介護ネットワークをを築き上げていくわけですか。

 

そうです。私は新潟の黒岩卓夫先生(開業医―4月号参照)の考え方に大賛成で、「スモール・イズ・ビューティフル」をモットーにしたい。つまり小型のグループホーム、デイケアセンター、居宅介護支援所、訪問看護ステーションなどを数多く配置して、ネットワークで結びます。

もちろん開業医、薬局、歯科医、旅行業者、コンビニ、買物代行業者、配食サービス業者、ボランティア組織などと手を組んで、お年寄りの生活圏に合わせた、使いやすいミニ施設作りをめざします。商店街の空き店舗が増えていますから、そこを利用させてもらう。資源の有効活用にもつながり、何より安上がりですよ。「人間サイズ」の施設こそ大切です。今から“ポスト介護保険”のビジョンを準備しておきたいのです。

 

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“地域に数多くの介護拠点を”と精力的な日々を過ごす桜井さん。

 

 

 

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