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今度のプロジェクトを組み立てた介護福祉課の田中潤介護サービス係長は市町村長のシンクタンク、(財)東京市町村自治調査会に出向し、介護保険の実施システムの研究に携わった。稲葉三千男市長はこうした若手に地域ケアシステム設計作りを任せたのである。田中係長は「この仕事が面白くてたまらない」と声を弾ませる。

 

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市の保健・福祉・介護の担当者と在宅介護支援センター、社会福祉協議会の担当者が集まって開く自立支援会議。

 

うってつけの人材に恵まれて

民間にも人材がそろっている。実際に介護予防を担う東久留米市指定事業者協議会の会長と同市の介護保険事業計画策定委員を務める高原敏夫氏は特別養護老人ホーム「マザアス東久留米」施設長だが、特養ホーム全館にじゅうたんを敷くなど利用者優先の先駆的な福祉センスの持ち主だ。副会長である石橋幸滋石橋クリニック院長は自治医科大学で地域医療学を専攻。米国ワシントン大学で家庭医学を修めて保健・医療・福祉を一体として実践する地域ケアのエキスパート。東久留米を地域医療の最先端にしようと張り切っている(本誌96年8月号・さわやか対談に登場)。

また市民のボランティア活動も盛んだ。「ここはNPOのメッカ。法人格を持つNPOがいくつもある」(高原氏)。市は配食サービスの調理は事業者に、配達は有償ボランティアのNPOにと機能と役割を配分し企業とNPOの特性を生かして介護産業を育成する方針だ。東久留米市は介護保険時代にうってつけの人材と土壌に恵まれているのである。

 

介護予防のメニューと財源は国が用意した。それらをどう生かすか。介護保険は市町村のアイデアとやる気を試す。この分野で東久留米市は抜きん出ている。出遅れた自治体は「自立老人」が、いずれ要介護老人になって保険料の値上げに追い込まれるだろう。付けは住民自身に回ってくるのだ。

 

 

 

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