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一年三六五日、二四時間介護を強いられる介護者は気の休まる間がありませんから、ときに鬼になることもある。そうした家族介護の悲劇を解決するためには、孤立した介護者にならない工夫が必要で、それには住環境を整備して、開かれた介護の現場をつくることが一番だと、常々思っていたんです」

再建に当たっては、福祉住宅という命題の下に、その分野を得意とする建築家と施行工事担当の工務店、そして桑山家が一堂に会して十分な討議を積み重ね、理念を統一することから始めたという。

その結果、一階をサロンに、二階を家族の生活の場にすることとし、設計にも材料にも自然を採用しようという基本方針が決定。また、段差は五mm以下に抑え、扉などは車イスの利用者を念頭に置いてすべて引き戸にしたほか、上下可動の手洗い器、目線を高齢者や車イス利用の高さに置いた下部開閉式の窓、太陽熱を利用した冬暖かく、夏涼しい床下温調式の空調システムの採用などの工夫もなされ、ホームエレベーターも導入。外回りでは、緊急に備えて駐車スペースを二台分確保することにした。

「実は、計画の途中で、義姉はがんで亡くなってしまったんですが、家の完成を誰よりも待ち望んでいた彼女の遺志に報いるためにも、当初の計画通り、ミニ・デイサービスを開設して、地域の方々のお役に立てるような活動を展開していこうと、心に誓いました」

 

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見学会受付風景。地域の人々と老人会、建築関係、福祉関係の80名余でおおにぎわい。

 

 

 

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