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そもそも桑山さんが福祉の世界に足を踏み入れたのは、約十二年前のこと。叔父が脳梗塞で倒れたことから、介護技術を身に付けるために、長寿社会文化協会(WAC)主催の第一回ケアワーカー養成研修を受講したのが発端。以来、約一〇年にわたって市民互助型のホームヘルプ事業に携わってきた。そんな桑川さんが、ミニ・デイサービスを事業の柱とした「ゆずり葉」を新たに設立しようと思い立ったのは、阪神大震災で自宅が被災したことがきっかけだという。

「当時、年の離れた義姉と一緒に住んでいたのですが、彼女は股関節が悪かったので、いずれ歩けなくなる日が来るだろうと思っていたんですね。そんな時に震災が起こって、被災住宅の再建が必要になったことから、どうせ再建するならば、やがて車イスが必要になる義姉と、介護者となる家族にとって住みやすい家をつくろう。そのためにも、住まいの一部分に地域の方々と語り合えるスペースを持とうと、考えたのです」

家族にいずれ介護が必要となる人がいるのだから、バリアフリーの福祉住宅をつくろうというのはわかる。だが要介護者がいるのに、その住宅の一部を開放して、ミニ・デイサービスの場を設けようと考える人はまれだろう。桑山さんはなぜ、そういう思いに至ったのであろうか。

「長年、ホームヘルパーとして介護者を抱える多くの家族と接してきて、介護を受ける立場に立った視点と、介護者としての愛情の論理だけでは解決できない多くの問題に直面させられました。たとえば、ケア先のおばあさんのおむつを替えたらつねられたと思われるアザができているとか、前日の食事が下げられないまま部屋に置きっぱなしになっているといったことは日常茶飯事。

 

 

 

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