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「第二東名・名神高速道路の建設に伴って、立ち退きを余儀なくされて移転したのを機に、会員さんたちが活動しやすいような家をつくろうと思いましてね。新たに託児・宅老所を始め、生きがいづくりとしての趣味的なクラブも取り入れましたし、(サービスを提供する)ケアワーカーさんたちがひと仕事終えておしゃべりをしにやって来ることも多いから、いつも人が絶えないんですよ」と、川上さんは目を細める。

まるで、春の日溜まりのような居心地のよさがここにはあった。

 

義母の介護をきっかけに仕事を辞しボランティアの世界へ

一男一女をもうけ、子育てと仕事を両立させながら大学で栄養学を教えていた川上さんが、人生の進路の転換を余儀なくされたのは、介護問題がきっかけ。同居していた義理の母が大腿骨を骨折して長期入院したことで、仕事と家庭、介護の三つの課題を抱え、過労から体を壊してとうとう職場を去らざるを得なくなってしまったのだ。

「ほんのちょっとした手助けがあれば、あの時仕事が続けられたのに…。そんな思いからボランティアに目が向くようになったんです」

九二年に数人の仲間と、掃除や洗濯など身の回りの世話をする助け合いのグループ「ネットワーク大府」を立ち上げた川上さんだったが、その後、さわやか福祉財団の提唱する時間預託制度に共鳴。九四年の十二月に、時間預託を取り入れた「さわやか愛知」を新たに発足させたのだった。

「ボランティアというのは、世代間の助け合いが基本。元気な時にボランティアをして貯めた時間を、必要となった時に引き出してサービスを受けられる預託制度があれば、次の世代へと活動もつながっていくのではないかと思いましてね。それでまずは家族に呼びかけたところ、応援してくれるというので、家族五人で団体を立ち上げ、事務所として自宅を開放し、電話一本で活動を開始したんです」

団体を設立するにあたっては目標を持つことが大切と、川上さんはまず、五か年計画を立てた。一年めは仲間づくり、二年めは実績づくり、三年めは組織づくり、四年めは託児・宅老所の開設、五年めは他団体とのネットワークづくりである。そして着実に一歩ずつ目標を達成してきた結果、現在は会員数は協力会員三八二名、利用会員四一三名、一か月の平均活動時間は三八○○時間にも上る団体へと発展した。

 

 

 

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