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そして何よりも、福祉機器は購入後が本番。天井走行リフトが空中で止まってしまった、電動スクーターが道で動かなくなってしまった―など数々のことが考えられる。いつでも修理は頼めるのか、値段はどれくらいかかるのか、自宅まで商品を取りに来てくれるのか、なども事前にしっかりと説明を聞いておきたいところだ。

また福祉機器は選び方を間違えると、症状の悪化や事故につながることもあるから、じっくりと相談し、できれば展示場等に直接出向いて試したほうがいい。NPO法人キキウエップを主宰する本田千恵子さんは、「給付だからとか医療関係者にすすめられたからと安易に考えず、種類や使用方法をしっかり見極め、身体の状態にきちんと合ったものを、専門家のアドバイスを受けながら最終的に自分で判断するのがベスト」だと訴える。

本田さん自身、よいモノが広まっていないと強く感じている。値段の割に性能がよくなかったり、介助者の視点でしか見ていなかったりと、使う人のことを考えたモノづくりや情報の提供がまだまだ足りないと指摘する。

たとえば、日本の場合、道路や廊下が狭い、車イスごと列車に乗れないことがあるなどの理由から「コンパクトで折りたためて軽量な車イス」が好まれる。そのためシートが布一枚の、折りたたみ式モノが多い。しかし、これはあくまでも周囲の人の利点に過ぎない。これに長時間座ると重さで布が下にたるみ、座っているのが非常につらいのだが、利用者も不平は言えない、仕方がないとあきらめている。実際、さまざまなタイプの車イスに試乗した高齢者の一人は「車イスってこんなに楽なものだったんだ」とつぶやいたという。行政の貸与品も同様だ。自治体によって差はあるが「行政のレンタル用の車イスは型も古いし、一番遅れている。ずっと使用するなら購入することも考えて」と本田さん。

 

使う人の気持ちを大切に

まずは身近なものから試してみる

介助者や家族も福祉用具に正しい知識を得ることは大切だ。しかし、いくら商品選びが正しくても、本人に馴染みのないものを無理に使わせてトラブルが起きたら、何にもならない。

 

 

 

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