姑は細かい動作が不自由で、たとえば、風呂場で身体を洗うときに手が届かない、湯船から上がるときに身体が重い、階段の上り下りがつらい、食べ物をこぼす、玄関のベルが聞こえにくくなった―などなどの自覚症状がある。福祉機器を使えば、そのうちのいくつかは解決できるかもしれないとは思うが、「全て身体能力の衰えたもの。仕方がない」とあきらめているのが現状で、本人が機器を使うことに消極的だ。嫁の立場としても、「機器では愛情が伝わらない」といった誤解を招いたり、ほかの人の手前もあって、本人に強く勧めることはむずかしいという。それでも介護保険申請を機に、各種パンフレットを取り寄せて情報集めに奔走中。「今まで何も知らなかったので」というA子さんの言葉は、私たちほとんどに共通するものだろう。
一方、介護の専門の場となる特別養護老人ホームでは、車イスや介護用ベッド、入浴用具、食べやすい食器、ポータブルトイレなど、多くの福祉機器が日常的に使われている。しかしこちらの問題はその使われ方。「身体や症状の異なる一人ひとりに合った機器が使われているかといえば、そうではない」と「特養ホームを良くする市民の会」会長の本間郁子さんは指摘する。画一的な機器が使われている場合も多く、身体に合わないため車イスからずり落ちたり、ずり落ち防止用に車イスに縛り付けられたり。
介護保険で購入できる福祉用具
腰掛便座
特殊尿器
入浴補助用具
簡易浴槽
移動用リフトの吊り具