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その理由として、日本では、欧米のように中央組織が給付(助成)品目・性能を定めておらず、1]福祉用具の公的給付・助成制度が複数あり制度ごとに窓口が異なる、2]給付対象品目や性能等の要件が給付機関である市町村ごとに異なる、等の事情で広域のマーケティングや販売活動がむずかしいためだ。また、自治体が購入者となる場合、地元の業者を優先する傾向が強いことなども理由の一つといわれる。

アメリカ・ドイツ・フランスでは、公的給付(助成)で専門家による処方や助言を受けられたり、利用者が差額を自己負担すれば高機能・高品質な用具を入手できる。無料貸与方式を採るノルウェーやスウェーデンも利用者の希望や状況を十分配慮した上で、専門家による用具の選定と適正使用の指導がなされる。ようやく日本でも、公的介護保険制度により保険給付額内であれば、利用者が「ある程度の選択」ができるようになったが(機器自体知らない一般家庭 個人に合わせない福祉施設参照)、品揃えも種類もまだこれから。福祉機器に対する意識が官民共に低かった現状が、そのままこれまでの市場に反映しているといえるだろう。

 

値段に不満が集中

日本の機器は高いのか?

さて、福祉機器を語る上で「選択の機会が少ない」「情報が少ない」以上に不満が多いのが、実は値段。九八年六月の福祉用具産業懇談会三次中間報告でも、販売店への希望も「価格を安くしてほしい」がダントツに一位である。では、みんなが不満に思っている値段、国際的に比較するとどうなのだろう?

「各国の標準タイプの価格比較 (日本の価格を100とする)」『対日アクセス実態調査報告書―福祉用具―』日本貿易振興会)をグラフにしてみた(次頁上)。

たとえば、設計・製造に技術力が重視される「手動車イス」「電動車イス」「介護用ベッド」など。確かに日本より安い場合がほとんどだ。より詳しく中身を見てみると、「手動車イス」では、日本の多くの自治体で給付対象になっている標準タイプは溶接組み立てのため、組み立て後の調整はできないものが多く、構造上の修理はメーカーへの依頼が必要。

 

 

 

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