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死んだ婚姻は死んだものとして扱うより外はない。無理に生きているように擬制するのは、不能であるばかりでなく、残酷である。協議離婚は当事者双方からの死亡届出であり、裁判離婚は国が行う死亡診断である」と書いてありました。この立場からすると、娘さんと養子の婚姻は、残念ながら既に死んでしまったものと診断せざるを得ませんので、離婚が相当という結論になります。娘さんは離婚する、その代わりあなた方ご夫妻も養子を離縁する(離縁しないと養子は相続権を持つ)、それが理性的な選択でしょう。ただ、これは大変苦しい選択であり、いつかは自分の元に帰って来てくれるだろうと期待し、あくまでも待つという選択も、決して間違っているとは思えません。

昨年5月4日の毎日新聞に「1万キロの渡り、途中でやめた」という記事が載っていました。毎年オーストラリアの越冬地から繁殖地の日本にやって来る渡り鳥ホウロクシギの中で、別の方角に向かって飛んで行ってしまうのがいるとのことでした。娘さんのところに赤ちゃんをくわえて運んで来るはずだったコウノトリが、間違えて別の女性のところに運んでいってしまった、二人の愛はそこでお終い。そんなふうに考えるのも、寂しいけれど、一つの悟りかもしれません。

こう書き終えても、体の中を冷たい風が吹き抜けるような気持ちです。

 

 

 

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