日本財団 図書館


当世高齢事情 NO.13

公証人 清水勇男

 

養子の浮気…。婚姻は生き物なのか

 

「私たち夫婦は、遠縁の子を養子に迎えて一人娘と結婚させ、家業の洋品店を継いでもらったのですが、6年経っても子供に恵まれず、それだけが悩みでした。ところが、真面目一本だと思っていた養子が浮気をし、子供まで生まれていたことがわかりました。それからは地獄でした。娘は養子を責める、養子はそれなら離婚しよう、娘は絶対別れないというくり返しで、とうとう養子は出て行ってしまい、今は浮気の相手と同棲し、子供と3人で暮らしています。娘を見ているのがつらく、老いの身にはこたえます。どうしたらよいものでしょうか。娘は31歳、不妊の原因はわかりません」

娘さんの身を案じられた母親からの相談です。人が婚姻でしか子供を産むことができないものと神様が決めておいてくれたなら、こういう問題は決して起こらないはずなのに、と天を仰ぎたくなります。原因はすべて養子の不貞な行為にあり、養子からいくら離婚を認めてくれと裁判を起こしても、裁判所が認めるはずはありません。離婚したくないと思ったらがんばっていればいいのです。ただ、問題はそれが娘さんにとって幸せなのかどうかということです。

もう絶版になりましたが、東北大学の故中川善之助・教授が書かれた『民法大要』(勁草書房)という本の中に「婚姻は生き物である。次第に育つこともあり、また衰弱して死ぬこともある。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION