どの自治体も財政状態は苦しいわけですから、介護認定について厳しくならざるを得ない面はありますね。
やむを得ない事情は認めますが、地方の小自治体は行政サービス機関としてまだ成熟していないと思いますね。公正・中立な運営を望みたい。
民家を借りてミニ施設を
財政難といいながら、地方ではどんどん高齢者向けの施設ができていますね。不思議な現象ですね。果たして採算に乗るのか心配になります。
人口一〇〇〇人、二〇〇〇人の町に何億円もかけて立派な高齢者センターが次々に建設されている。いわゆるハコ物作りです。これでは福祉に名を借りた土木行政・公共事業といわれても仕方がない(笑)。それよりもヘルパーや理学療法士などを養成するといったことを地道にやってほしい。施設をいくら作っても、マンパワーが付いてこなかったら大変なことになります。
「施設あって介護なし」ということにならなければいいのですが…。
行政側も発想の転換をして、その地域にふさわしいやり方を考えてほしい。私の診療所では、空き家になっている民家を活用してデイケアセンターを作りました。五月に開くグループホームも民家を改修して、その近くにいる痴呆老人五、六人のケアやリハビリを始めます。県から五〇〇万円の補助金が出るので、これで何とかやり繰りします。住居に近いので家族も安心でしょう。たとえば五〇戸の集落があるとすると、一〜二軒は空き家があるものです。そこを補修して、ミニデイケアセンターにすればいい。ボランティアに支援を頼み、医師、看護婦二〜三人が訪問してお年寄りの介護をする。老人にとって使いやすい、アットホームなミニセンターをたくさん作りたい。大きなハコ物を作っても、送迎の手間だけで大変なんです。
なるほど。それはいいアイデアですね。お金もあまりかからないようです。
その地域、地域にふさわしいやり方があるはずです。自立と認定されたお年寄りでも、体は弱っているから、心身のリハビリを求めている。そういう人たちを放っておけというのですか。市町村の担当者も国や県の顔色ばかり伺わないで、地域の高齢者のニーズをもっと汲み上げてほしい。介護保険を地方自治復権の場として活用してもらいたい。