新潟県・魚沼盆地の北端に位置する大和町・浦佐(うらさ)。「かかりつけ医」を自認する黒岩医師は、毎日、午後から往診に出かける。雪国に暮らす人々と苦楽を共にし、命を守る活動を続けて三〇年。保健・医療・福祉の三つを一体化した地域医療の先駆的モデルとされる「大和方式」を編み出した黒岩さんは、介護保険の運用や高齢者ケアのあり方についてこう注文を付ける。
(聞き手/鎌田穣)
心のこもったネットワークこそ
先生は一九八七年に出された『地域医療の冒険』という本の中で、山本周五郎の『赤ひげ診療譚』を引き合いに出して、保健(健康の維持)と医療行為、福祉活動は切り離すことのできないものだと主張されていますね。三位一体の考え方で、七六年にスタートした『大和医療福祉センター』はその実例だと伺っています。介護保険制度では、これがキーワードになると思いますが…。
確かに「大和方式」は高齢者介護を念頭に置いた先駆的なケースで、歴史的な意味はあったと思います。ただ、これからは介護保険制度がいい意味で市民の中に入っていく時代ですから、大和方式が制度として万全かといえば、必ずしもそうとはいえない。