京極 国際比較でこの一五年ほどの動きを見ますと、介護に関してはドイツの例が一番日本の風土に近いんですよ。北欧は意外にボランティア活動が弱いし、アメリカなどは行政が弱い。ドイツを基本に各国のいいところは取り入れて日本流にアレンジしようと。折衷案的でよくないという人もいますが、保険プラス税でやや変化球に富んだ日本的な制度になったんじゃないかと思っています。
堀田 日本の現状に即したものをという判断の中でいえば、まず負担とサービスの関係が基本にありますね。負担はどの程度なのか、税でやるのか社会保険でやるのか…。その方向性はどのようにお考えでしたか?
京極 基本線は、やはりこれからは高福祉、しかし中負担だろうと。方式もいろいろと議論しました。今でも税でやったほうがいいという意見もありますね。ただ、デンマークの消費税二五%のように税率を上げられるわけがない。
堀田 消費税を五%から七%に上げるだけでも国民は大反発するわけですし。
京極 保険料にしても今の金額で高いじゃないかと。負担とサービスは当然リンクするものです。そこは理解してもらわないといけない。ただしすべてのサービスが公的な財源による必要はないんです。民間やボランティアの活動とも連携して高福祉中負担くらいを考えるのが日本の方向なんだろうと思っています。
堀田 見方を変えれば、介護保険というのはこれ以上ない明白な目的税ともいえますね。市町村に決定権を与えたことで住民に目的税であることがより一層はっきりするし、サービスとの関係も非常によく見えてくるわけですから。
京極 他に使い道はまったくないですし、強制されているから利用税とか目的税といっても全然おかしくない。北欧の医療が税方式といわれるけれども、市町村、コミューンが財源を確保していて、これは日本でいう社会保険料みたいなもので、コミューンが被保険者になって県という保険者をつくっている。日本人が思うものとはちょっと違うんですね。国税では負担と費用の関係がどうしても見えなくなるんですね。