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京極 日本的な風土の中で何とか新しい福祉の骨格ができつつあるんじゃないかと思っています。それではちょっと理想的過ぎるので年金に上乗せしようとか、医療保険に入れればいいとか安易な道もありましたが、それは避けられました。

堀田 京極先生は一〇年以上前から介護保険制度の仕組みをずっと考えられて、ボランティアの啓発についても中枢で関与されてこられました。この一〇年ほどの流れを見て今の現状、進み具合をどうお考えですか?

京極 この一〇年はひと言でいうと介護サービス発展の時代でしょうね。私が厚生省の社会福祉専門官になったのが今から一五年ほど前ですが、その当時からドイツの介護システムを日本でぜひやるべきだという考えはあったんです。でもそれをどう日本で定着させるかが問題だと思っていました。一つは強制ボランティアのようなもの。ドイツでは徴兵制の義務を行わない者は福祉ボランティアでその義務を請け負っているんです。二つめが日本でいう介護福祉士のような専門職(老人介護士)の導入、そして最後が介護保険制度。とても至難の業で、まず、厚生省がその気にならない。

堀田 措置制度をなぜ変えなければいけないのか、それを充実させていけばいいじゃないかとか。

京極 そうです。介護保険などとんでもない、介護は主婦でもやっているし専門性は必要ないはずだ、専門家集団をつくると生意気になって困るとかですね(笑)。介護福祉士の制定などでは労働省ともずいぶん激しくやりあって、一九八七年にようやく社会福祉士および介護福祉士法ができたんですが、これが介護の底上げにつながりましたね。それから約一〇年で介護保険ができた。これがなければ介護保険は医療保険の中でやっていたかもしれませんね。

堀田 世界のモデルとしては行政主導の北欧型や市民によるアメリカ型、あるいはイギリスのように北欧モデルから転換したものもありますが、ドイツに着眼された理由というのは?

 

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