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海賊ももちろん船を動かす能力のある連中がたくさんいるわけです。船のことはよく知っているし、どういうふうにすればいいのか、わかっていてやって来ている。ただ乗るところを誰も見なかったのが実に恥ずかしい話です。どうしてだれも気がつかないのか。前よりも後ろのほうを気にしろと、言うだけ言って降りたのですが、要は後ろのほうを見ていなかった。

それからサードメイトがワッチをやっていたのですが、彼の話だと海賊が来る少し前に、右舷を明かりをつけた高速の漁船が、右から左に横切ったと言うんです。そのときは海上法だと普通、右によけなければいけないという規則になっているわけです。その漁船をこちら側がよけなければいけないので、それに気を取られてそっちに曲げて、前を通り過ぎたから戻したらしいのです。

そのとき夜の10時半になったので、船の位置を出そうと思ったのですが、灯台がまだ近いところにありました。それで灯台の方位を見ようと思って右舷のブリッジのウイングに出て、ベアリングを取ろうと思ったのです。そして歩踏み出したら、もうそこに何人かの海賊が来たので、泡をくって後ろに下がった。そしてドアを閉めてロックしようと思ったら、反対側からもう入ってきたと言います。

それは嘘じゃないと思います。それが現実です。それが仲間の陽動作戦だったかどうか、それは証拠もないし、まったくわからないのですが、実際そういうことが現実にあったのです。ですから乗ったとしても直前に乗っているのでしょうけど、そのときに誰も気がつかないというのは、ほかの人間はほとんどが疲れて部屋に入っていたのです。そこにいなかったからわからないと思いますが、ブリッジの人間が音か何かぐらい感じなかったのかと思うのですが、言っても無駄なのです。現実はそういうことでした。

それからこういう場合の予防対策ということですが、もちろん権威者の方がいろいろと考えているらしいので、私のような半分素人みたいな者がいろいろと申し上げることはないと思います。これも相手次第で、相手がこそ泥程度でたいした武装もしていないのだったら、水をぶっ掛けるぐらいで帰ってくれるかもしれません。

かなり武装しているとか、そういうことに自信のある連中だったら少々のことでは結局引き下がらず、乗り込んでくると思います。そういうとき逆にこちらがかなり抵抗した場合、向こうは端から殺してやれということになるので、どっちが有利か。こっちが完全に武装していれば、これはまったく問題ないのですが、こっちが武装していない場合、水のホースぐらいでどのぐらいの効果があるかということです。

 

 

 

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