ですから私はそれは疑問に思っています。相手次第で、相手が本当に強力な武装をしてきて、それではこちらも武装したらいいのかということになると、日本の船の場合もちろん法律上難しいのはわかっています。こちらが銃武装で、通常のピストル、鉄砲ぐらいだったら相手はバズーカ砲ぐらいは持ってくるだろうし、そうなったらどちらが強いかと言うことになってくると思います。だから武装すればいいか、そんなことは言えないと思いますが、現実にやられない船はアメリカ、ロシアの船です。何でやられないのかというと、完全に武装しているのを海賊たちが知っているからだというのです。
だから民間の商船だろうと、ピストルぐらいはみんな持っているわけです。やはり相手も日本の船が何もないというのをわかっているから、安心して上がってくる。そういうことはあります。だから武器が抑止力になるということは確かにあると思います。では日本も武装したらいいのか、それは私も疑問に思います。向こうはどんな武器だって、お金があるので手に入ります。銃武装しても、たとえばバズーカ砲にまで立ち打ちできるはずがないです。
それから乗組員の士気というのがあります。そこまでたとえば近づいてきた。それでは水をぶっ掛けて追い払えと、怖がらずにみんながやってくれるかというと、やる人もいるかもしれないが、海賊が近づいてきたら出たくない、逃げてしまえという人もかなりいるのが事実です。だから乗組員にやる気がないのだったら、これはとても勝ち目がない。そういう事情もあると思います。これはその船、船、みんな違うと思うので、一概には言えないと思いますけれど…。
考えてみれば、みんな単に出稼ぎに来ている人たちで、命をかけるまでのものではないわけです。こちらが抵抗して勝てばいいけど、負けた場合は皆殺しになることを覚悟でやらなければいけない。それまでの士気があるかどうか、私は疑問に思います。特に全部日本人というわけではないので、そのへん、いかに戦わせるかと言ってもやる気のある人とない人がいます。命令したからやるということではありません。
司会:今回のセミナーでお話がありました、池野船長たちを救助したタイの漁船の船長が、日本財団の招きで21日、あさって日本に来られるそうです。池野船長の命の恩人ということで大変楽しみにしているということで、この場をお借りしてご報告いたします。
お時間となりましたので、これで2000年の「うみ」・「ふね」セミナーをすべて終わらせていただきます。池野船長どうもありがとうございました。(拍手)