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第3点は、非常に不幸なご体験をされたわけですが、今後シージャックを防止するにはどうしたらいいか。この船は非常に速い海賊船で、また相当な技術を持っていないと操船できないような船だそうですが、海賊はそういう海賊艇を操縦することができたようです。そこで放水とかいろいろなことで、シージャックを予防する対策が検討されているようですが、船長のご経験からどういうふうにすればいいか。この三つについて差し支えない範囲でお答えいただければ幸いです。

池野:最初のご質問ですが、内通者がいたかどうかですが、これは事件が起きて救助されてからもいろいろな方面の方から、そういう質問をたくさん受けたし、取り調べも受けました。確かに港に停泊中にもそれらしき怪しいのが来たんじゃないかと、いろいろありましたが、結局私にはそれらしき者は、全然わからなかったというのが現実です。

出航してほとんど2時間ちょっとの間に襲ってくるのは、明らかにもちろん積荷も知っているし、全部わかっていて待ち構えていて、待ち伏せに合ったようなものだというのが私の印象で、実際そうだったと思います。

乗組員の中に内通者がいたかということですが、もし内通者がいたとしたら、結局向こうの仲間でもあって、海賊としてもわれわれを捕まえてから同じ扱いをするというのはひどい。内通者だったらそいつだけ別にするとか、もう少しいいことがあってもいいのではないかと思うのですが、まったく同じでした。乗組員全部が同じ条件で漂流も何もかもさせられているので、内通したって何の得もなかったと思います。そこまでするかどうかわかりませんが、言葉でもインドネシア語をできる者はいないし、とてもそんなふうに思えません。これは確証があるわけではないのでわかりません。

海賊がその前に乗って隠れていたのではないか。そういう話まであったのですが、あの程度の船であれだけの人数が隠れるとこというのは非常に限られてしまうし、1人だけでもいたのではないかと言われると、私は実際に証拠を見ていないし、あとで結局そうなっているので何とも言えません。

だけど私は内通者もいなかったし、先に乗ってきた者もいなかったと思っています。これは証拠があって申し上げているわけではないですが。そのへんは随分疑われているということはわかっていますが、私はそういうふうに思いたくないという気持ちではなくても、そのようには信じられない。だから何もいなかったのです。

一番いけなかったのは、もっと厳重な海賊ワッチをした状態で、相手が乗ってくる前に見つけて撃退すべきだったというのが一般的です。

 

 

 

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