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中にはフィリピンの人でお腹の出た、太った人がいたのです。漂流中にも冗談で「助かるころにはお前のお腹も引っ込んで、かっこよくなるな」と冗談を言っていたのですが、そういう人はあまり引っ込みもしないし、減りもしなかったようです。

どうもああいうところでは、太った方のほうが有利なのではないかと思いました。歩くとか何かそういう条件になると、歩くのはエネルギーが要りますから、同じとはいえませんが、じっとしている分には絶対に太った方のほうが有利なのではないかと感じました。

時間もありますので、このぐらいで終わりにしたいと思います。このような経験は、私の人生の最後の船だと思って乗った船で、このようになったものですから、まことについていないというか、悪いほうの宝くじに当たったようなものだなと思っています。今後このようなことが世界の海からなくなることを希望して終わりにしたいと思います。

何かご質問をお持ちの方がおられるのだったら、遠慮なく、言っていただきたいと思います。私のお答えできる範囲でお答えいたします。

 

質問:三つばかりご質問があります。まず第1点は乗組員の中に、海賊に出航を知らせた者がいたのではないか。あるいは船の中に海賊が潜んでいる。というのは金曜日に外務省で国際法の研究会がありました。普通、海賊は目標の船に乗り移ってそれを捕獲するわけですが、船の中に初めから潜んでいるとか、あるいは内通者がいる場合には海賊の定義に入らないという海洋条約の法律上の疑問がありました。船長として部下を疑うということはお聞きしたくないのですが、事実関係としてそういうものがあったかどうか、それが第1点です。

第2点は先ほどのお話では、出航のテレックスを打とうする前にシャワーをお浴びになったということですが、船長自身はテレックスを打つ間が無かったかと推測するのですが、シージャックの信号を機関長は自分の部屋に閉じこもっている間にお打ちなったかどうか。というのは日本の海上保安庁、いろいろな船主から、5日後にシージャックにあったらしいという情報があって、それから日本の海上保安庁の救難艇が東シナ海に飛び立ったんだそうです。

三池のほうに向かっている進路の東シナ海の中途まで探しに来たそうですが、見当たらないので引き返したそうで・非常に残念なことになった。結局シージャックの信号がもっと早く日本の海上保安庁なり、船会社に到達していればもっと対策が早く打てたのではないかということが第2点です。

 

 

 

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