ほとんど毎日、朝と夕方にご飯をくれたんですが、スープ皿のようなものにご飯をもって、初めのうちはフライドチキンのようなものとか、干した魚が一切れぐらいのっていたのが出たことはありました。すぐ1日ぐらいしたら、向こうのラーメンを茹でて、お汁はなく、塩味はしていますが、要するにお湯から切ったものをご飯の上に乗っけたものを出してくれました。ラーメンをおかずに食べるしかないのですが、それしか出なかったので、同じ物を最後まで食べました。実際に向こうもたいしたものを食べているわけではないし、あまり食糧もなかったんだろうと思うので食べていました。
水も初めこそ、500cc入りの上等なものが出てきましたが、二日ぐらいしたらなくなったようで、入れ物は同じですが中が濁った水が出てきました。こんなものを飲んで体のほうがいかれたら大変だと私も警戒して、いろいろ聞いてみました。そしたら「煮沸かしているお湯だから絶対に大丈夫」と言い、「熱いのをもってこい」と言ったらやはり、沸騰したように熱いものを持ってくる。冷たいのというと、同じ汚いんだけど冷たいのを持ってくる。
「これはどうしたんだ」と言うと、冷蔵庫で冷やしたと言うので、信用するしかないので結局汚れた水を飲んでいたんです。でも誰1人お腹を壊したという者がいなかったので、実際、かなり沸騰させて殺菌された水だったと思っています。その点では向こうもこちらの健康を気遣うということではないにしても、そこらで病気になられたり、死なれたりしても向こうも困ると思ったのか、それぐらいの神経は使っていたみたいです。
参考にはならないと思いますが、ゲリラグループに捕まった場合でも、相手が人質を1人ずつ殺すという場合でも、これは仕方ないのですが、下手な抵抗はやらないほうがうまくいくのではないかと私は思います。
漂流に関しては、これは海にいなければ起りえないので、あまり関係ないかと思いますが、山の中で遭難したとか、要するに水、食糧不足の状態でどうやって生き延びるかという問題が起きたときには同じケースだと思います。ただ、筏の場合には体を動かすことができない。まったく寝て暮らしているようなものですから、失うエネルギーが非常に少ない。山の中では助かるために、それこそずいぶん歩き回らなければならないとか、すごいエネルギーを使うので、同じではないし、同じように長持ちすると言うことはいえないと思います。
われわれは結局、漂流を始めて、何をどれぐらい食べたかという話になると、筏に積んでいる食糧はどこも同じです。われわれの筏の場合はオランダ製の食糧だったのですが、一つが大型のマッチ箱ぐらいのものなのです。空けると中にカロリーメイトみたいに栄養のある粉を圧縮した板のような状態で割れ目みたいになっていて、一枚が六つぐらいに切れたのだと思いますが、それがほとんどです。