大型船は、非常に遠くをかなりの数が通ったというのは事実で、そのへんに来たと思われるあたりでシーアンカーを入れていたこともあります。また入れていても全然見えないとまた気が変わって、シーアンカーを上げてまた少しほかの場所へ移動しようとしました。その間、約5日ぐらいでした。2回ほど、相手の進路から見ると、非常に近くを通ると思われる船が夜中に現れて、これは絶好のチャンスということでわれわれは信号弾を用意しました。
通常われわれが持っているパラシュートの信号弾は4発ありますが、これは打つと上空に上がってそこでパラシュートが開きます。それでそのパラシュートの下に赤いランプというか・花火みたいなものがついて、それがほとんど水面に降りるまでずっと明るく辺りを照らしている。これがパラシュートつきの信号です。
もう一つは、信号紅炎という言い方をします。花火みたいなもので、筒型で発火すると、そこから明るい明かりを出します。それは手に持っているんです。1分も持たないぐらい燃えている信号があります、夜間の場合これを使うというのが鉄則です。そのときもあまり早めにやってしまうと無駄球になると思いまして、せいぜい1マイルぐらいまで近づくのを待ちました。
距離は勘で言っているので、正確ではないのですが、2回そういう船にあったのは、夜中で2回ともどうみても1マイル以内、1マイルというのは約2キロ弱で1.85キロぐらいですが、それ以内、1000メートル位ではないかと思ったぐらい近くを2隻は通りました。
十分引き寄せてこれなら見えるだろうというときに、パラシュートをまず打ち上げて、それが消えた時点で今度はわれわれの位置がわからなくなってしまうといけないということで、筏の上に普通の懐中電灯のような、小さい明かりですがフラッシングをやるライトがついているのです。それをピカピカさせて信号紅炎という赤いのをつけて、1分ぐらいやりました。
そうすればまず位置もわかるだろうし、われわれの常識では通常当直には2人はいるはずで、航海士のほうは海図の仕事とかいろいろで、前を見ていないということはあっても、もう1人の、日本語で甲板手と言っていますが、そういう人が必ず前を向いていることになっているので、あの明かりが見えないはずがないと思っています。