日本財団 図書館


私の入った部屋ももとは大きなテーブルがあって、ソファーがあったような部屋です。ソファーは半分ぐらい残っていたのですが、机は取り払われていて、ただ床があるだけでした。その床の上にぼろぼろのマットレスのようなものを敷き並べて、その上に寝ていろというオーダーでした。もう一つの部屋も同じなのですが、そちらとの連絡はできないのです。とにかくそこに横になっていろ、お互いにしゃべってはいけない、立ち上がってはいけないとかいろいろ言われました。見張りが入り口の外の通路に、椅子を持ってきて座ったりしてナイフ、ピストルを持った者がそこで24時間監視をするという状態で始まりました。

私も、われわれの運命はどういうことになるのかと。海賊は証拠隠滅に皆殺しをやるのが常識なんだろうと思っていたのですが、どういう殺し方をするのだろう。ナイフで切るのか海に突き落とすのかと、その時点では考えていました。これは2日3日経つと、われわれを監視するにも人数がいるし、大変な手間だと思うし、食事も1日2回ですが、何か食べ物を持ってくるし、水がほしいと言えば水を持ってこなければならない。

トイレと言えば連れて行く。すべてわれわれの面倒を見るのは向こうです。かなりの手間がかかっている。二、三日したら「殺すんだったらもっと早く殺すだろう。こんな手間やお金はかけないだろう。もしかすると殺さないのではないか」とそのときは考えました。

殺さないにしても最後はどういうかたちになるのか。解放するのであれば、どういう仕方をとるのか。どこか陸につけて上げると、証拠が残るからとてもできることではない。その時点で、どういうかたちをとるのか想像ができなかったです。毎日毎日が非常に長く感じました。

ほかの方はどう感じるかわかりませんが、縛られているというのはそれほどの苦痛というか、ストレスにはならない。ただ目隠しは私には非常にいらいらするというか、何も見えないということは精神的にものすごくこたえました。テープで目隠ししていると、たいして高い鼻でもないけど、テープにどうしても隙間ができてしまう。

特に暑くて汗をかいてしまうとテープの付きが悪くなって、ここへちょっと指を入れるとそこがはがれてしまう。真正面を見ることはできないのですが、その隙間から下がだいたい見えることを発見したものですから、私は自分の精神衛生のために常にそこへ隙間を作って、下からだいたいは見えるようにしていました。

でもそういうことは、全部新しいテープでまたぐるぐる巻きにされます。こちらが見えていると言うことを、絶対に気づかれないようにやらなければいけないという苦労はありました。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION