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これは、たまたま見つけた船です。海賊船はどういうものだったか。17世紀、イギリス東インド会社のフォーレストという人が書いた話によりますと、彼がマギンダナオに滞在しているときに、海賊旅行をしてぐるっと周航してきて帰って来た船がいた。その船がセールをくるくる巻き上げて、ここに棒が出ていますが、ハンドルでぐるっと巻いてセールを巻き込むようになっている。そういう描写が出てくるのですが、これはその描写どおりにまだやっていたわけです。
それから3本マストです。3本マストというのは非常に簡易といいますか、これをはずせばすぐにバタンと倒れます。この2本をこの1本で支えているわけですから、これをはずせばすぐに倒れる。それで皆で漕いでいけば非常にスピードが出て、追跡したりするのに便利だと書いていますが、それを彷佛とさせるような船がまだあります。この3本のマストと、セールをくるくる巻き上げるやり方は三百年も四百年も変わっていない、昔からのものであると言えます。
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これはいままで話が出てきませんでしたが、スールーの中にバランギンギという島があります。それは本当の海賊島です。なぜバランギンギの話をしたいかというと、18世紀の末から19世紀の初めにかけて、スールー王国が非常に発展し、バランギンギ海賊が猛威を振るっていた時期がありますが、その根拠地となった島です。いまも、まだちらほらと人が住んでいます。バランギンギというのは海賊のための島で、一時期は住んでいる人がほとんど奴隷でした。奴隷狩りをして集められたのがこの島であると言われていました。
「バランギンギは昔、海賊だったね」と言ったら、「そうだよ」と言ってこういうものを見せてくれました。おじいさんのころまでまだ海賊をやっていたということで、この人のお父さんが聞いた話では、おじいさんは何人襲ったか数えるために耳をそいで、瓶にためて持って帰ってきたことがある。それほど非常に生々しいことです。
これは彼らが使っていた武器だといいますが、堅い木でできているバナナのようなこん棒です。それから同じく堅い木でできている盾です。
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バランギンギというのは、全くマングローブの島で、中に入ろうにも小さな水路がいくつかあるだけなのですが、水路を入っていくと、その水の中に中国の陶磁器などがバラバラと沈んでいます。それを持って帰って、三杉隆敏さんという陶磁器の研究家の先生に見ていただくと、清の時代のものが多いということでした。海賊の捕虜を連れてくる港は、大きいかどうかはわかりませんが、交易の一つの拠点でもあったわけです。