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これがさっき言ったアガルアガルという海草です。ここらへんの人たちは浅い海を畑のように耕して、わずかな魚を取ったりして、かつかつの生活で何とか暮らしています。おそらくこういった生活の仕方は何百年も変わっていないでしょうし、昔の海賊もこういったところを襲って金銀財宝を取るわけにいかない。やはり、アジアのこういった海岸地帯では人間が最大の獲物ではなかったかと思います。

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これも家の中です。家の中といっても、財産はせいぜいこんなものでしょう。服はわりとたくさん持っていますし、ラジオなどもありますが。だいたい皆、財産は金にします。最近は見られませんが、僕が最初に行った20年ぐらい前には、金歯をしている人がたくさんいました。財産をそういうふうにするわけです。

16世紀にメンデス・ピントという変なポルトガル人がいました。彼の『東洋遍歴記』というのが東洋文庫で出ていますが、これは16世紀半ばのヨーロッパ人が東南アジアにやって来た一番早いころの話です。全3冊ですが、ほとんど海賊物語みたいなもので、お互いに殺したり殺されたり、自分が捕虜になったり脱出したりという大冒険ばかりです。そういった中で、飲み込んだ金をどうやって吐かせるかという話が出てきます。

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これはさっき言いましたエンジンです。日本人の感覚からすればそんなに高くない、二、三万円ほどのものですが、現在は人間よりもこういったエンジンが最大の捕獲物です。もちろんいまも人間をさらっています。子どもが誘拐されたり、地元の人どうしの誘拐も結構あります。ただ、地元の人ではあまりにも身代金が少ない。子どもを誘拐しても日本円で3000円ぐらいを要求したりという話で、大がかりになると、アブサヤフのように外国人を誘拐して何千万と要求するようになります。ただ、それは組織が大きいわけで、こういった零細な海賊としてはせいぜいエンジンを捕るぐらいです。

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お互いに襲ったり、襲われたりという緊張感が常にありますから、こういった防護壁のようなものをつけて、村の中ではこのように常に監視している人もいます。隣の村同士が悪いとか、隣の村同士で何か事件やいさかいが起こって、隣の人を殺したとかいうことになると、また復讐事件が繰り返される。そうすると、緊張感が常にある。鉄砲を撃たれれば、ヤシで編んだものですから簡単に通ってしまう。ですから、場所によっては鉄板を張ったりして防御をしているところもあります。

 

 

 

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