彼は町も結構襲っています。ここらへんで町や村が襲われることはよくありますが、そういったこともやっていて、それで一財産をなし、ヤシの林を一つ買ったとか、奥さんを7回も替えたとか言っています。私も彼の家に泊めてもらったりして、話を聞いていたのですが、どこまで本当でどこまで嘘かわからないところもあります。しかし、決して嘘はついていないようです。というのは、別に悪いと思っていないからです。もちろん捕まれば犯罪だし、捕まることはあり得るのですが、ここではそういったことよりも自分の力を誇示することのほうがより重きを置かれている。皆、一つ油断をすればお互いに殺したり、殺されたりする立場にあるわけですから、嘘をついても仕方がないわけです。
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皆、自由に銃を持っているようですが、銃をチェックする場所があります。兵隊がいて、この港を出入りするときには銃を持っているか、持っていないかというチェック機能があるわけです。しかし、そういった機能が働かないところ、あってもなくても同じようなものといいますか、この人と知り合いだったら自由にできるというような状況があります。フィリピンのスールー諸島、ホロ島などで誘拐事件などが起きて、無法が行われているのは、そういった状況があるわけです。
ですから、いまの海賊事件も政情が不安であれば起きます。戦争が海賊を作り出し、平和が海賊を縛り首にするという言葉がありますが、非常な無法がまかり通っているから、海賊も自由に横行しているということです。ただ、その背景は、ずっと昔から続いてきたことでいまに始まったことではないということが言えます。
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これは家を襲うときです。家はどうやって襲うのかと聞くと、「じゃあ、やってやろうじゃないか。あそこをやってみようか」と、ひょいひよいと上がっていきます。家の人をホールドアップし、外に出して、家の中を物色する。「こういうふうにやるんだよ」とやってくれたのですが、実にあっけないほど簡単に、悪びれずやってくれます。
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これがさっき言った市民防衛隊の人たちですが、その人たちに「海賊はどうやってやるんだろう」と言ったら、やってくれました。これは家族の人たちです。急に来られてびっくりしていました。もちろん襲う前に「襲うぞ」と一声かけて行ったわけですから、そんなにびっくりはしないのでしようが。ただ、この市民防衛隊という、いわゆる市民を守ってくれる人たちも、海賊のやり方によく慣れているというか、手際がいいというか、あっという間にやってくれました。