アジアの連中は皆そういったものを持っていて、強いアンティンアンティンを持っているものは不死身であると誇っていると書いてあります。これもまた彼らの間では、不可思議な力を持った、自分は強いんだという力を誇示する意味があるわけで、そういった話を実際に彼から聞けたということは、面白いと思います。
彼は実はホロ島出身なんですが、ホロ島から逃げてタウイタウイという島に来ています。彼の話を聞くと、いわゆる復讐、英語でいまはやりのリベンジ、リベンジと言っていましたが、親戚の家の畑が不法に侵入されたので、殺して、殺し合いになって、皆に追いかけられ、とにかくこの島まで逃げてきている、ずっと殺したり殺されたりが続いているということを言っています。
ですから、いまでは考えられないような、それぞれの理屈においての殺し合いがいまだに行われている。アジアの海賊について、どうして彼らはそうなのだろうと思うとき、そういった根っこがあるということを知っておいていただきたいと思います。
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これは、私が冗談で、どうやって襲うのか教えてくれと言ったとき、「ではすぐにやってやろうではないか」と、近くの人を集めて船に乗せ、その船を止めてパッと飛び移って、こういうふうにしてやるんだということを教えてくれたわけです。彼が乗っている間に、ほかの人間はエンジンをとりはずして移し替えるということです。抵抗しなければ、だいたい殺すことはしない。抵抗するものは殺すということです。彼はタウスグ族ではないのですが、襲うときにはタウスグ族の言葉で話しかける。そうすれば皆震え上がって、素直に言うこと聞くということです。
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これは一応防衛軍といいますか、守ってくれるはずの人たちですが、私が話を聞いた限りでは100人以上人を殺したことがあるという大海賊も混ざっています。この人です。彼の話を聞くと、本当にどうなっているのだろうという感じがします。ただ、いわゆる海賊行為とホラメンタードであるとか、復讐であるとか、そういったことをきちんと使い分けています。
あのとき襲って殺したのは一つの復讐であった。たとえば奥さんの実家のほうで何か嫌がらせをされて、そいつを殺したのは復讐であるとか、役人や権力のある人を殺すときは復讐よりもホラメンタードであるとか、そういった殺しについてもいくつかカテゴリーを彼なりに持ってやっているようです。