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お金を持って移動するときには、自分たちで用心棒みたいなものを頼み、何人か乗ってもらって行くのですが、それでも襲われます。自分たちが頼んだ用心棒が寝返ることはあまりありませんが、その用心棒がほかのところでは海賊として働くといった二面性を持っています。

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ですから、私もこういった船を借りてどこかに行くときは、必ず用心棒を二、三人連れていくようにしていました。これは私が会った自称海賊でもあり、人も皆「こいつは海賊行為を働いている」と認めている男です。いつも愛用のマシンガンを持っています。この人は、さっき見ていただいたような小さな海の上に住んでいるのですが、そこに来たのはそんなに古いことではありません。

その前は別のところで区長までやっていた、かなりの人なのですが、あるときタウスグ族に奥さんが持っている財産を狙われ、襲われた。それで慌てて逃げてきたと言っています。ここでエンジンの注文があったりすると、また別の人を襲って海賊行為を働き、エンジンを取ってきて、それを売るということをやっています。

彼が海賊だということを皆知っているのにつかまらないのは、彼はまた用心棒でもあるからです。だから、彼がいると海上の小さな集落は襲われない、安全であるということで、ここでもそういった二面性を持っているわけです。彼に聞くと、人を何人か殺したことはある。それが何人かは秘密だということで、あまりはっきりは言ってくれませんでした。

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彼は海賊ではありません。防衛軍、用心棒のほうです。こちらに、ちょっと聞き慣れないトラメンターダとかアモック、アマロスといったことが書いてあります。さっきの海賊も、こういった連中に話を聞くと、必ず「自分はアンティンアンティンを持っている、自分は不死身である、自分の肌には鉄砲の弾は通らない」ということを言います。触ってみると普通の柔らかい肌をしていますが…。

そのアンティンアンティンというのは何かというと、いわゆるお守りです。そのお守りは何かというと、ちょっとしたきっかけで拾った石や、昔の海に沈んでいた古い船から取ってきた破片など、その人にとってちょっとした意味があるもので、それを身に着けておけば絶対に死なない、不死身であると信じているわけです。いまも彼らに会えばそういったことを聞けますし、16世紀にヨーロッパ人が書いたものにもアンティンアンティンというのが出てきます。

 

 

 

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