アブサヤフの誘拐事件、外国人を誘拐すると必ず何千万、何百万という身代金を要求していますが、そういった連中にとってスールー諸島、あるいはアジア全体で人間が最大の獲物でした。人間をさらってくれば、自然に増えてくれるということで、そういったやり方も古くからあったということです。
もう一つ、アジアの海賊についてよく言われることは、副業としての海賊行為、あるいは漁民海賊という言われ方です。これはごく零細な海賊です。フィリピンのスールー諸島で多発している現在の海賊はまさに副業であり、非常に零細な海賊たちです。1970年代から80年代にかけて、ベトナムからボートピープルがたくさん出ました。それがシャム湾で襲われているという、海賊事件が頻発していましたが、その海賊は誰だか全くわからない。タイの警察も捕まえることができない。
というのは、それはシャム湾にいる漁民ではないか。漁民はたいした武器も持っていませんが、ちょっとした刃物と鉄の棒といったもので襲っていたわけです。ほかのところの機関銃を持ったりしている海賊にくらべて、もう少し零細な、細々とやっている海賊です。それは統計にはなかなか出ないと思いますが、たくさんいるということです。
それでは、スールー諸島、スールー海はどういうものかということを写真でご覧いただきたいと思います。
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これは私も名前をよく知らない集落ですが、スールー海というのは静かな海と言われるように、珊瑚礁が発達した、わりと浅い海です。こういった海上集落があちこちに点々とあって、この人たちは何で生計を立てているかというと、ほとんどは漁師です。漁師であって、あとアガルアガルという海草がありますが、それを養殖して暮らしています。こういった島が点々と続いているのが、スールー諸島というところです。
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これは、いわゆる日本の出作り小屋みたいなものです。出作り小屋でもあるし、そこを住居としている人もいます。実はここらへんの海賊は非常に零細で、海賊自体もこういった家に住んでいます。
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これは乾燥して薫製にしたようなナマコです。あと、これはブダイだとか南の魚、タコなどです。奥にちらっと見えるのがアガルアガルという海草で、主にそういった海産物を採って暮らしています。こういったものは仲買人がいて、それぞれ買っていくわけですが、この仲買人なども海賊行為を働くことが結構多いようです。