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かえってやらないほうが被害は少ない。いままでのデータから見ても被害に遭うのは出会い頭です。どこかで抵抗した場合以外、ほとんどけがをしていないということも言われています。

その前に対策としては乗り込まれないこと、関係機関への連絡態勢をしっかりしておくこと、また船側の非常時の訓練を火災訓練と同じ程度にやっておく必要がある。もしものときに、どのように連絡をすればいいのか。特にマラッカ海峡は狭い海峡です。今年に入ってから海上保安庁はじめ、沿岸警備機関の協力体制がしっかりでき始めていますので、緊急信号を出せば速やかに助けが来るような体制がいま取られつつあります。

たとえば海上保安庁が、いまどういう行動を取っているのかということを簡単にご説明させていただきます。海上保安庁は“アロンドラ・レインボー号”のときもそうでしたが、日本人の生命、財産が危険にさらされた場合にはまず巡視船を出して救援に当たる。そして航空機も出して捜索にも協力するというような体制を実際に取っています。

また今年の4月にアジア14カ国・地域の海上保安庁長官に当たる方々が集まって、協力体制を組む会議を開いています。そこで情報の交換、それぞれの国の取り締まりの強化、各国の相互連携、協力の確認として、連携措置、捜査救助および捜査に対する協力あるいは定期的な専門家の会合などが話し合われて決まっています。

具体的に海上保安庁では近々、マラッカ海峡あたりの国と合同で海賊対策および海上安全に伴う行動の訓練を行うということも聞いています。私どもはいま現在日本政府、あるいは日本の関係機関になにができるのかと船会社さんにお問い合わせいただいたとき、海賊被害に遭ったらまずは海上保安庁にご連絡ください、海上保安庁の情報網で沿岸政府機関に速やかに捜査をしてもらう体制を取っていただければと提案しています。

いまのシージャックをはじめとした海賊事件は、一つはIT犯罪だと思います。GPSなどを使って、襲うべき船がどこにいてどこで待ち伏せをすればいいのかを調べる。あるいは沖合に出て、待機している海賊グループの複数の船に対して指示を出す。また積み荷の情報や運航スケジュールまでが事前に入手されています。そしてそれに伴って行動計画を作り、どこで積み荷を移し替えるのか、最終的には積み荷の売却ルートまでが確保されています。

先ほどの“アロンドラ・レインボー号”事件のアルミインゴットは最終的にはフィリピンで一部発見されています。そのようなIT犯罪に対しては、やはり国際協力態勢をしっかり取らなければいけないということが言えると思います。

 

 

 

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