それで下に協力と書いてありますが、船長協会の方、日本海難防止協会の方、船主協会の方に集まっていただいていろいろな話をしている中から、一番簡単なスタンダードタイプを作ろうということで作ったのが「とらのもん」です。船上での取り扱いが簡単、メンテナンスが簡単、安いということをテーマに開発しました。どういう器材かというと、船の舷にワイヤーを張り巡らせて、そこにロープ、フックあるいは侵入者が少しでも引っかかると、このワイヤーの先にっけた光ファイバーを使った検知装置が作動して音が鳴る。あえて光ファイバーを使ったのは、ワイヤーから鉄の感知装置を作ると防爆と言って、タンカーなどでは火気厳禁なので火花が散らないように光ファイバーを使いました。
これは船の科学館の“宗谷”を使って公開実験をしたときの模様ですが、ひっかかるとブーというサイレンとともに、その場所に光が照らされるという仕組みになっています。現在16隻のモニターシップを募集して実際に取り付けています。いまモニターシップが動き出したところですので、近々相応の報告が来ると思いますが、なにせ被害に遭わないのが一番です。被害に遭ったという報告は受けないほうがいいので、付けていることが明確にわかれば、おそらく被害には遭わないかと思います。また非常に安い、いま1万トンクラスまでの船だったら、だいたい15万円から20万円でフルセットができる。それなら取り扱いも簡単なのではないかと思います。
海賊対策についていろいろなご意見があります。どういうことをすべきなのか。一つはガードマンを雇ったらいいのではないかというご意見があります。しかし一つの船を守るのに何人のガードマンが要るのか。実際に海賊被害対策用のガードマン会社は私どもが知っているだけで3社あります。ひとり1日だいたい30万円、4人1クルーで120万円です。それを3日雇うと360万円、では年間どのくらい航海するのか。航行する船舶が海賊に遭う確率はだいたい2万分の1です。それだけの比率でそれだけの資金をかけられるかというと、船会社の方はすべてノーです。そして4人のガードマンで、多いときで20人から30人来る海賊に対して対応ができるのか。
また先ほどビデオで池野船長が言っていましたが、船長や機関士が拳銃を持っていたらどうか。これは相手に撃たれる前に殺さなければいけません。確実に殺さなければいけません。それだけの訓練が日本人にできるかどうか、まず無理だと思います。残念ながら武装して身を守ることは不可能だと思います。