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海賊問題に関する情報機関がIMB、国際商業会議所国際海事局ですが、こちらも民間機関なのでやれることには限りがあります。クァラルンプールにあるパイラシーレポートセンターは従業員4人で運営されています。所長を含む4人の人間で、この広い海域で頻繁に起こる海賊事件に関して情報収集を行い、情報伝達するにはあまりにも希薄です。この国際商業会議所の国際海事局に直接加盟している日本の船主、あるいは日本の船に関係する会社は6社しかありません。6社しか会費を納めていないということで資金的にも厳しく、いまIMBの組織の強化が重要な課題になっています。

IMBは具体的にどういうことをやっているかというと、各船会社から海賊被害に遭ったという情報を集めます。そして沿岸を航行するすべての船に対して、ファックスなどいろいろな方法で連絡をします。IMBに船会社から海賊被害に遭ったという連絡が入ると、近隣の海上保安機関すべてに同時に連絡が行くようになっています。たとえば“アロンドラ・レインボー号”のときはインドから中国までのすべての海上保安機関に対して、いま事件が起こっているという連絡が伝わりました。そして船の形をファックスなどで流して、そういう船を見かけた方は至急連絡をくれ、似たような船でも結構だから情報をくれという連絡をしています。

また海賊対策についてはいろいろなところで検討されていますが、私どもはインターネットに海賊情報ホームページを設けています。こちらに来る情報から未遂事件が、どうして未遂で済んだのかということを分析すると、乗り込ませないための準備が大切なようです。これは冗談みたいな本当の話で、海賊は音と光に弱いので、ライトを照らす、音を鳴らす、これが一番効果的です。また目に見える警備をとっている船には近づかない、近くまで来ても逃げるということが報告されています。

そして乗船しようとしても、サイレンを鳴らすとだいたい逃げていく。わざわざ警戒している船を襲うリスクを彼らはあえて冒さないのです。ガードのあまい船ばかりを狙う。舷の高さが8m以上の船はほとんど襲われたことはなく、中型以下の貨物船を狙う傾向があります。準備を整えていれば、ある程度未然に海賊被害を防げるというのが現状かと思います。

私ども日本財団では海賊対策としてスタンダード型の警報装置を考えました。「とらのもん」という名称を付けたのですが、これは虎ノ門にある金比羅さまにちなんで、江戸城を守る虎ノ門ということ、そして虎ノ門の金比羅さまは航海の安全の神様ということで「とらのもん」という名前にしました。船会社の方とお話ししましたが、警報装置は付けてもいいが高いのがいやだ、手のかかるのもいやだ。フィリピン人クルーでも日本人クルーでもみんなが使えるようなものでないと困るなどと、非常に都合のいいことをいろいろ言われました。

 

 

 

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