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なぜ急に海賊被害が増えてきたのか。IMBで分析したところ、ハイジャック事件がいま追及が厳しくて鳴をひそめています。それに加わっていた実行犯グループが、ハイジャックほどの大きな犯行から声をかけられないために小口の犯行を重ねているのではないか。私のペーパーの頭に、ヒアリング調査をしてまとめただいたいのイメージが書いてあります。うっそうと茂ったマングローブの林から、長さが20フィートくらいの船に船外機を付けたものが高速で海面に出ていく。聞くところによると海賊船はだいたいこのような形で、非常にスピードが速く、4、5人グループで寄ってきて船に乗り込む。

昔からこの海峡にはマレー半島側とインドネシアのスマトラ島を行き交う船がいくつもあって、現代になって政府がマレーシアとインドネシアの二つに分かれても実際にはかなり頻繁に行き来をしているようです。それが密貿易であったり海賊になったりするわけですが、実際にはマラッカ海峡は自分たちの生活圏であるという認識が強いようです。

インドネシアのある島の村の様子を近くの灯台の上から撮りました。実際にこの村はいつの間にかできた。インドネシアですが住んでいるのはすべてマレー人です。マレー人が来てこの村を作った。この村は島の突端で後ろは全部ジャングルなのですが、なにを生業として生きているのかと言うと、マレー側よりもインドネシア側のほうが非常に海が豊かで取れる魚も多いので、インドネシア側で取った魚を高速艇でマレーシア側のマラッカなどの町に運び売りさばく。これは正確に言うと密輸になります。

また、マレーシア側にあるいいものをインドネシア側に運ぶ。こうしてこの村は暮らしを立てていると言われています。私も行ってびっくりしたのですが、電気は灯台から黙って引っ張って各村に配線し、それで村が生きている。でもそれに一々クレームを付けていたのでは灯台の機能はあっという間に果たせなくなるので、共存していくために妥協して盗電を暗に認めているということです。このような村で、小さい船に船外機を二つ付けて、どうして漁船にこんなにスピードが要るのかというスピードで船が行き来していましたので、なにかのきっかけで目の前に獲物が来たら海賊行為をしてしまうのではないかと思いました。

過去を振り返るともともとは漁民たちの暮らしを支える生活の場であったわけですが、そこに見ず知らずの外国船が行き来するようになり、略奪されたり村ごと襲われて焼け野原にされたりという繰り返しの中から、自分たちの暮らしを守り支えるために海賊行為や密輸、密航の行為が起こってきたように思われます。けっしてそれを肯定することはできませんが、なんらかのかたちで抑制していくためには、新しい方策や政府に対して求めていくもの、あるいは国際的な協力等、考えなければいけないと思います。

 

 

 

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