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99年34件と書いてあります。日本の関係船が34件も被害に遭っていることはあまり耳にすることがないと思いますが、この34件で約13億円の日本の財産が海賊によって奪われています。地域的にもインドネシアが圧倒的に多いです。またマラッカ・シンガポール海峡に多いということが表れています。

この調査は第1回を1999年の4月に行いました。それまで海賊被害というのはあまり皆さんは耳にしなかったと思いますが、私どもはどうも私どもの耳に入っている海賊被害の件数が政府に報告されている件数よりはるかに多いのではないかと感じていました。昨年の4月に私どもが調査をする前、1998年に海賊被害は何件起こったか運輸省に確認を取ったら2件だという答えが返ってきました。でも私どもの耳に入っている件数はそれよりはるかに多かったので、どうも実態が正確に把握されていないのではないかということで調査をしたところ、20件というちょうど10倍の数字が表に出てきました。

なぜ政府に報告しなかったのか。世間では海賊被害を報告することによって途中の港で停船して調査を受ける日数のロス、それに伴うペナルティ、損失金額、船を1日泊めると何百万円単位の損失が出ること、あるいは船長の名誉に傷がつくということ、将来的に保険料が上がるのではないかということなどが言われています。具体的な例ではインドネシアのサマリンダというところでこそ泥事件が多発したので、この調査後に日本政府がインドネシア政府に対して改善策の要望を出しました。

そうしたら、そのような報告は中央政府には届いていなかった。末端の警察署に報告しても中央政府にまでは届かない。末端の警察署もこそ泥事件を一々相手にできるような国柄ではないようで、報告したところでなにをやってくれるのか。これが船の運航者サイドが報告しない一番の理由だったようです。

しかし昨今だんだん被害がエスカレートし、政府間同士で対策を講じていることから、被害に遭った船主さんあるいは運航者の方はぜひ報告をしていただきたい。そうすることで国際的な行動も取りやすいし国内の体制も整えられるので、私どもからも海上保安庁、運輸省どちらかで結構ですので、ぜひ報告をしてくださいというお願いをしています。この調査における日本関係船というのは日本の船会社が実質的な船主、オーナになっている、もしくは運航に携わっているものを日本関係船として調査しました。

ここで最近の海賊事件、特に私どもの生活に密着しているマラッカ・シンガポール海峡での海賊被害に関する報告をさせていただきたいと思います。マラッカ海峡がどうして重要なのか。

 

 

 

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