ただこの数値は急に一昨年98年の220件から285件になったかというと、私が聞いている限り実際の件数的にはそれほど増えていない。海賊問題が注目されるようになって、報告の数が増えてきたということが言えると思います。海賊被害の件数はここ3、4年だいたい横ばいになっているように思います。
2番目の海賊の、襲撃形態の内容という表をご覧いただきたいと思います。特に注目されるのは乗っ取り、シージャックです。これが1997年以降増えています。1995年以前にはほとんどなかった事件です。この5年くらい乗っ取り犯が増えているというのは、明らかにこの5年でシージャックを企てるシンジケートグループが成立してしまったということだと思います。
また海賊が携行していた武器を3番目の表に載せてあります。1996年までは素手が非常に多かった。見つかったら海に飛び込んでしまえばいいと、武器も持たずに乗り込んできてなんでもいいから盗んで帰るというのが多かったのですが、97年から拳銃を持った海賊が増えてきました。逆に言うと海賊にまで拳銃が流通してしまっているということで、非常に危険な兆候です。併せて刃物を持った海賊も増えています。武器を持ってくるというのは、襲う側もそれなりの覚悟で来ているということなので、騒いだときにトラブルが起きる。刺されてしまう、撃たれてしまうというケースが多いようです。
また乗員に対する危害では、この5年間で184人もの方が海賊によって殺されています。日本人が1人も入っていないということもあって、日本国内ではこういう事実は全く報道されておりません。一つここで興味深い数字ですが、1999年の殺人が3件になっています。その前の年が78人、そこから3人に減っているというのは非常に興味を引くのですが、どうしてこういうことになったかと言うと、99年から国際的に海賊問題が注目されるようになりました。特に、“テンユウ号”事件、“アロンドラ・レインボー号”事件などが起きたことによって、警機関の追及も非常に激しくなってきた。
人を殺されなければある程度黙っているようなところも、殺人が出るとなかなか収まりがつかない。特に“テンユウ号”事件のときには韓国の船員が二人行方不明になっています。これに関して韓国政府は正式な調査隊と私服調査官を派遣して、かなり厳しい調査を行いました。そして積み荷の売却グループの実行犯3人を逮捕しています。そういうこともあって、人を殺すこと、手に掛けることに対する追及が厳しいことが犯行グループにも浸透して、被害がどうにか3人で食いとどまったということにつながっていると思います。
資料2は海賊被害に関する調査報告というレポートです。これは私ども日本財団が日本の海運会社および海事関係団体に協力を求めて調査を行ったものです。