これはイスラム教徒がみそぎ、自分が起こした犯罪を許してもらうために異教徒を襲撃して殺す。一種の宗教行事として行われていて、本年もフィリピン南部で何件か二十数人殺されたというニュースを聞きました。破廉恥犯などで捕まると一生親戚中が村八分にされてしまうので、宗教指導者のもとに行って銃を借りて白装束に身を包んで異教徒の村、イスラム教ですからキリスト教の村に行って、手当たり次第殺してしまう。これも一つの海賊行為としてフィリピンのコーストガードや海軍では非常に注意しています。まあこれは例外ですが…。またスリランカにはタミール・タイガーといわれる反政府組織があって、金欲しさや積み荷欲しさに海賊行為を行うことがあります。
ではいま海賊被害の状況はどのようになっているかということですが、参考資料の1をご覧いただきたいと思います。一番上の表は過去5年間の海賊被害件数です。昨年1999年、正式な報告書が出たところで285件になっています。その後に追加報告があり、いまでは1999年の被害合計は300件と言われています。特に東南アジアは158件で、非常に東南アジアに集中しているということが言えます。
ただこの東南アジアの被害はほとんどのケースが先ほどの分類から言うと窃盗型、盗みが中心になっています。この犯行の地域別の内訳ですが、158件のうちインドネシア領海で113件、これは沿岸が非常に多いということも言えますが、インドネシアの政情不安が海賊行為の引き金になっているということも言えるかと思います。過去の例を見ても、政情不安や経済危機等が海賊行為に直接に影響することが報告されています。
十数年前にフィリピンにおいて海賊被害が非常に多くなりました。フィリピンの政権がどんどん変わっていく過程で、末端軍部のコントロールが効かなくなり、そのころに海賊被害が非常に多くなっています。また中国においても北京のコントロールが末端まで効かなくなっていたときに、中国南部沿岸でも増えていた時期があります。最近ではインドネシアの政情不安がダイレクトに海賊被害の件数に結びついています。
このデータはIMB、International Maritime Bureau、国際商業会議所国際海事局というところが収集しています。これは純粋な民間機関で運営されていて、このような報告ベースの数字を取りまとめています。IMBはクアラルンプールにパイラシーレポートセンター、海賊情報センターを持っていますが、285件というのはそこができてから最大の数値です。