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ではそもそも海賊とはどういうものか。皆さんは海賊という言葉からなにを思い起こされるでしょうか。私にとって海賊とは小学生のころに読んだスティーブンソンの「宝島」に出てくるシルバーという片足の海賊です。私は小学校5年生くらいになって初めて読みましたが、出だしのジム少年の親が経営している宿屋に老いぼれた呑んだくれの海賊が来て、そこに黒犬という海賊が追いかけてくるくだりが非常に怖かったのを覚えています。

「宝島」に出てくるシルバーのように残酷でずるがしこいのが海賊というイメージだったのですが、皆さんにとってはいかがなものでしょうか。

日本において歴史上海賊と呼ばれるものは少し意味合いが異なります。中世に東アジア沿岸を襲っていた倭寇、これは比較的現代の海賊に近いものかと思いますが、戦国時代瀬戸内海の海上覇権を握った村上水軍、織田、豊臣の海軍を支えた九鬼水軍、あるいは九州北西部の沿岸地域を治めた松浦党など、どちらかと言うと治める領地を陸より海に持った海の領主という性質を持ったものを海賊と言っています。

海外では、ドクロのトレードマークが出てくると海賊だというイメージでいくつかの物語が構成されているかと思います。またキャプテン・ドレークというスペイン無敵艦隊を破ったイギリスの船長がいました。ご存知の方も多いかと思いますが、キャプテン・ドレークの船をはじめ、私掠船と言われる敵国の艦隊を襲いその荷物を奪うことを特別に認められた船があって、もしものときには軍隊として行動する。

キャプテン・ドレークはスペイン艦隊を破ったあとは救国の英雄として勲章ももらっていますが、このように認められた軍事力と盗賊行為を併せ持っていた面があるように思います。また倭寇もキャプテン・ドレークのようなグループもともに海賊行為と貿易の両方を行っていたという性格を持っています。広辞苑には、「海賊とは海上を横行し往来の船や沿岸地域を襲って財貨を強奪する盗賊」という表現が載っています。これがおそらく正しい海賊の認識だと思います。

現在は海賊行為をどのようにとらえているか。国連海洋法条約というものがあって、わが国もこれを批准していますが、この第101条に「私有の船舶または航空機の乗務員または旅客が、私的目的のために行うすべての不法な暴力行為、抑留または略奪行為であって次の者に対して行われるもの。公海における他の船舶もしくは航空機またはこれらの内にある人もしくは財産、いずれの国の管轄権にも属さない場所にある船舶、航空機、人または財産、いずれの船舶または航空機を海賊船舶または海賊航空機とする事実を知って、当該船舶または航空機の運航に自主的に参加するすべての行為、これらを扇動しまたは故意に助長するすべての行為」という表現があります。

 

 

 

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