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司会:それではここで、講演を今まで聞いて、先生に質問のある方はいらっしやいますでしようか。

質問:瀬戸内海の能島、因島、来島あたりの狭いところで、海賊行為をしていたものが水軍的になりまして、能島の終焉が海賊行為の終わりとみてよろしいでしょうか。ほかのところは水軍とみてよろしいでしょうか。

宇田川:たまたま一つの例として村上一族の話をしました。大方、日本全国そうなっているのではないでしょうか。能島が海賊行為をやめて、最終的には海賊はいなくなる。つまり存在できなくなるのです。つまり陸の支配が海にいくと海の支配はできなくなりますから、そういう意味では天正16年の海上賊船禁止令で一応海賊といわれるものは姿を消します。

戦国時代から海軍へ転身をするわけです。かつて海賊的な生き方をしていたのが、大名の権力のなかに吸収されて水軍になっていく。みんなこのようになっていくが、能島だけがそのままです。逆にいうと能島は九州から塩飽島ぐらいまで権益を持っています。

あの近い範囲ではなくて、長い瀬戸内海の広域な範囲で権利を持っています。これは荘園年貢の輸送ルートをずっと持っているということだと思います。よろしいでしょうか。

質問:種子島の鉄砲を伝えられたということですが、今回の話の内容では倭寇によって伝えられた。しかも唐船で伝えられたということですが、最近の教科書ではそれは修正されているのでしょうか。

宇田川:されていないのではないでしょうか。教科書がどのような手続きでつくられているのかわかりませんが、これは今後の問題提起となることはまちがいないと思います。いちおう教科書はきちんと書いてあることが原則ですが、疑問を持って見ることも大事だと思います。わたくしの話も疑問を持って聞くということです。

司会:ほかに質問のある方いらっしやいますか。

質問:きょうは初期の倭寇の話はあまり聞けなかったのですが、初期には日本の倭寇が高麗へずいぶん行ったと思います。それで高麗が困って元に助けを求めて、それが元が攻めてくるきっかけになったということではないでしようか。

宇田川:最初にも申しあげましたが、非常に複雑な外交関係があります。少し話はそれますが、室町幕府が日明貿易を開始するきっかけは倭寇です。お話のように倭寇が横行しているので、それを討伐してほしいと日本に言ってきます。それで、そういう外交関係を成立することによって、倭寇を鎮める効果もあったと思います。ただ鎌倉以降になると、中国は元もそうですが、どこが日本を支配しているかわからないわけです。江戸時代であれば徳川幕府が全国統治しています。

 

 

 

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