カナリア諸島まで下りてあとはほとんど真西に進めばいい。一度やや北に進んだけどこまた元に戻って結局はバハマ諸島に着いた。緯度を守ることが大切です。それは当時でもきちんとできました。当時はアストロラーべという機械がありまして天測をやるのです。北極星の高さを調べると、ごく簡単な計算で自動的に緯度が出てきます。ですから緯度の計算さえ間違わなければ、真西、真西に進んで行けば着くということで成功する。
それ以後の航海者たちは緯度の測定はアストロラーべを使って問題なくできますが、経度の測定がなかなかできない。それをやるために非常な苦心をする。たとえば印のついた長い紐を船からたらして、そして砂時計で測って船の速度を見て一日の進行速度を出して、だいたい経度を見当つけて行く。そういうことをやったのでとても正確な数値は出ないので、いつも失敗する。大変危なっかしい航海をやっていたわけです。
それで、経度をちゃんと測定できるようになったのは18世紀になってからです。ジョン・ハリスンのクロノメーターが発明されました。実はクロノメーターは六つぐらい懸賞で作られていたんですが、そのうちのジョン・ハリスンという人のクロノメーターが一番性能が良かった。それを初めて使って、経度を正確に出しながら航海したのがキャプテン・クックの第2回航海です。それまでは緯度は出せたけど、経度が出せないという非常に危ない航海をやっていました。
もう一つは私は船乗りではないので大きなことは言えませんが。私はある熟練した航海者の方と親しいのでいろいろ話を聞いてみますと、航海というのはやはり測定ということが非常に大事であると同時に、潮と風に対する知識が非常に大切である。コロンブスが成功した一つの理由は同緯度にあると想定されたところに、真西に向かって進んだということと、帰りを見てみると彼は北回りで帰っています。アソレス諸島を通ってポルトガルのリズボアに帰ってきた。ということは、彼は真っ直ぐ西に進んで帰るということはしなかった。北をちゃんと回ってアソレス諸島を通って帰っている。ちゃんと風と潮の流れを知っていたわけです。
もし彼が真っ直ぐ直行しようとしたら、おそらく帰れなかった。ということは、コロンブスはかなり大西洋の風や潮のことを知っていた。彼の日記やなんかの分析から彼がポルトガルの船でアフリカまで行っている。あるいはブリストルに行っている。あるいはゴールウエイに行っている。ある説によるとアイスランドまで行っているという説があるので、少なくても大西洋東部に関しては、彼は非常に風と潮をよく知っていたと考えられる。ですからその知識を利用して航海したとも言えます。