ではこれで私の話を終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。(拍手)
司会:ありがとうございました。せっかくの機会ですので、先生に何かお聞きしたいことのある方はいらっしゃいますでしょうか。
質問者:一つお願いします。今日のカリブ海の大海賊とは少しずれた質問かもしれませんが、バイキングについてちょっとご説明いただければと思います。海賊のバイキング集団とバイキングという料理様式の間には関係があるのかないのか、先生のお考えをお聞かせください。
増田:バイキングというのは、一種の海賊と言っていいと思います。デンマークからスカンジナビア、スウェーデン、ノルウェー、さらには彼らが移住したアイスランドを基地にして活動した連中です。彼らははじめ異教徒で、キリスト教に改宗しませんでした。それでヨーロッパの大陸部には、フランス、ドイツ、ポーランド、スペインというキリスト教国が多い。そのキリスト教国に、北欧から攻め込んで略奪を行っていた異教徒だったのです。
それがたとえばフランスに行って、ノルマンディ地方に攻め込んで住みついてしまうと、だんだんラテン文化の影響を受けて言葉も自分たち本来の言葉を捨ててフランス語を話すようになる。そういうのをノルマンフレンチと言いますが、そのノルマンフレンチを話す連中が1066年にイギリスを征服して、アングロサクソンの王朝を倒して、ウイリアム1世、いわゆるノルマン人の征服をやりました。
それから同じ11世紀にはアイスランドからグリーンランドに行ったバイキングが、アメリカまで航海しました。現在のニューファンドランドまで行ったということが、実証されています。当初は略奪行為をしていた異教徒がキリスト教徒の領域に乗り込んで定着していくと、キリスト教を受け入れ、その文化を取り入れてだんだん変わっていく。彼ら自身もやがて本国においてキリスト教徒になって、結局スウェーデンもノルウェーもキリスト教国になったのです。