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モーガンはジャマイカの副総督として非常に平穏無事な晩年を送ったそうです。ただ、海賊というのは非常な労働で無茶な酒を飲みますから、晩年は肝臓か何かを壊して真っ黄色になっていたそうです。海賊は長生きはしませんね。

バッカニアの時代は、だいたいヘンリー・モーガンで終わったと考えていいです。つまり、イギリスとスペイン、フランスとスペイン、イギリスとフランスが交戦状態にないとバッカニアは活動できない。イギリスとスペインが戦っている間は、バッカニアは十分に活動できたし、国や有力者から資金ももらえたけど、和平条約が結ばれるとそういうことができなくなる。もしかしたら自分の国の政府に処罰されてしまう。

スペイン王位継承戦争というのが18世紀の初めに起ります。これがイギリスとスペインとの間の、18世紀前半においてはほとんど最後の大きな戦争になります。それが終わるとユトレヒト条約というのが結ばれます。そのあとバッカニアの船員たちはあぶれて職がなくなってしまい、海賊行為ができなくなってしまいます。

そこで政府もジャマイカに特使を派遺して、バッカニアたちを集めて「お前たち、正業にかえれ」と命令した。ちゃんとした商船に移るとか、あるいは陸上に農園を買ってそこで働くとか、正業につけと言うのです。ところがそんなことを言っても無理です。それまで海の生活しか知らない男に、いきなり百姓をやれというのは無理なんです。バッカニアというのは大変だけど、ある意味では愉快でおもしろい商売です。

政府の言うことを聞いて正業に就いた者もいたのですが、海の泥棒を続けたい人間も相当出てきました。そこでいわゆる海賊、英語で言うパイレートというのが出てきたのです。つまり、国からもう免許状も何ももらえない。国の命令、法律、条約に逆らって略奪行為をやる。違法行為である。しかもそうなったらやけのやんぱちで、自分の国でも何でもかまわないからやってしまえと、イギリス船だって攻撃するようになる。そこで本当の海賊になるわけです。

皆さま、スチーブンソンの『宝島』という本をお読みになったことがあると思いますが、あの中に出てくる海賊は19世紀の海賊になっていますが、だいたいいま言ったような意味での海賊です。もうバッカニアが不可能になって、どこの国の船でも略奪する。本当の海賊になった。もし捕まれば国から厳しく罰せられる。フランシス・ドレイクはいくら残虐なことをやって、金を敵から奪い取っても誉められてサーになった。もうそのようなことはありえなくなる。バッカニアは存在できなくなる。

 

 

 

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