年に1回ないしは2回通うマニラ・アカプルコ間を通うガレオン船は、行きは銀を積んで、帰りは絹とか陶磁器などの貴重品を積んでいる。どっちを襲っても大変な金になる。
そのマニラに向かうガレオン船をフランシス・ドレイクは始めてカリフォルニア沖で捕捉したのです。大量の銀を積んでいたのを奪ってしまう。そしてその銀を持って太平洋を横断して、今度は香料諸島に行きます。いまのインドネシアのマルク諸島です。あの香料の産地に行って香料を銀でしこたま買って、喜望峰を回ってロンドンに帰り着いたわけです。
船が沈みそうになるくらいに宝を積んで帰ってきたといわれています。このときのドレイクの船に対する出資の配当は3000%だったそうです。最大の出資者はエリザベス女王、エリザベス1世だった。エリザベス1世はこの配当金でそれまでの国の借金を全部返してしまった。まあ、森総理がお聞きになったら羨ましい話だと思います。いま日本の国の赤字は600兆円だそうですが、それを一度に返せるといったらそれは奇跡ですが、その奇跡が起こったのです。しかもそれもプライヴァティアのおかげです。
そこでドレイクは国民的英雄になって、そしてサーの位をもらいます。サー・フレンス・フランシス・ドレイクです。最近どういうわけか、イギリスでドレイクの伝記の本がどんどん出るんですが、何か意味があるんでしようか。みんなサーがついています。海賊の親分がサーになってしまった。プライヴァティアの一番の典型は誰かと言えば、いま言ったフランシス・ドレイクということになっています。
次はバッカニアという言葉があります。「バッカニアはカリブ海の私掠船員あるいは海賊の両方を指すが、元はスペイン領エスパニョラ島の、野生の牛の肉を焼いて生活した人々を指したが、彼らはスペイン人に追われて海賊となり、その後カリブの海賊がこの名で呼ばれるようになった」と説明されます。少し語学的なことを申しますと、バッカニアという言葉は、言葉の感じからわかるようにフランス語のブキャネー(boucaner)という言葉からきたのです。
ブキャンというのは何かと言うと、炭火をおこして牛の肉を焼くときの網のことをブキャンと言います。ブキャンという言葉自体がアメリカの原住民言語のトウッピー語のムケムという言葉からきたのだそうです。その語源を聞いてもわかるように、肉を網焼きにする人間、という意味だったのです。