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のちにオスマン帝国ができると、コンスタンティノープルを陥落させてここを首都にしますから、オスマン帝国の支持のもとにバルバリアの海賊が、主に地中海北部の、キリスト教徒の港や船を目標にして海賊行為を行う。これには二つの特徴があって、一つはこれはキリスト教徒の側から見ればまさしく海賊であるけれども、イスラムの側から見るとこれは聖戦である。つまりコンスタンチノープルの偉い人のお墨付きを持ってやっているから海賊でも何でもない。異教徒に対する戦いであるということになる。そういう一面性が一つの特徴です。

第2番目にはキリスト教徒を襲う場合、随分ひどいことをやっています。イタリア、スペインの海岸は、しょっちゅうコーセアに襲われ、略奪され、女子どもを含めて大勢の人間が捕虜になってバルバリアとかに連れて行かれてしまう。それでどうなるかというと、だいたい奴隷にされてしまいます。きれいな女性はハーレム、後宮に入れる。女奴隷として売る。そういった非常に悲惨なことになります。

『ドン・キホーテ』で有名なミゲル・デ・セルバンテスも、若いころ、バルバリーのコーセア海賊に捕まって5年間、アルジェで抑留生活をしています。彼はそんなに金持ちではなかったのですが、お母さん、姉さんが非常に苦労してお金を集めてくれたおかげで釈放されてスペインに帰れた。セルバンテス時代というと16世紀ですから、かなり詳しいことがわかっています。

いろいろ本を読んでみると、すでにスペインにバルバリア海岸の海賊から、捕虜になったキリスト教徒を救出する一種の委員会みたいなものがあって、教会が中心になってお金を集めて、そのお金を持って教会の修道士の代表が1人か2人、船に乗って敵地に乗り込んだそうです。交渉してこれは500、これは1000というお金を払って、交渉が成立するとその連中は自由になって帰る。

救出委員会の基金はヨーロッパ各国が持っていたらしいです。少なくともスペイン、フランス、イギリスは持っていたようです。イギリスなどもだいぶ海賊にやられています。というのはバルバリア海岸の海賊はイギリスまで行って、掠奪や人さらいをやった。大変なものでした。だからイギリスにも捕虜救出委員会みたいなものができてお金を集めた。ところがお金が集まると、汚職事件がいろいろ起こったという記録が残っています。

 

 

 

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