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古典的な海賊の発展過程にみるような庇護勢力があるとは思えませんが、今回の事件は、海賊の成立の条件を全部満たしています。技術を持ち、拠点を持ち、情報をかく乱して姿をくらまし、売りさばき場所まで持っている。これはわからないことだらけで、あとからこの講座に出てくる講師の方に、そういうことをきちんと踏まえた解説をしていただけると、私としてもありがたいのですが、楽しみにしています。

司会:もう一方どうぞ。

質問:ロマンに満ちたお話しなんですが、二つあります。一つはステンカ・ラージンというのはロシアの海賊と聞いていますが、これは海賊だったんでしょうか。それから、つい最近沖縄の宮古島に行きましたら、海賊キッドが宝を埋めた島があるということを聞いたんですが、事実なんでしょうか。

小島:私もこの間、一週間ほど石垣島で現代の海賊というか、自在に海を舞台に活動した人々の話を聞きに行って来ました。あそこの海洋民は、技術的にも精神的にも、すごいですね。現代の日本で海賊が成立するとしたら、あのあたりが最も適地かも知れません(これはジョークです)。…ただ、キッドかどうかは別として、西洋の海賊の財宝があそこに埋められたということは、可能性としては絶対にないとは言い切れないと思います。あの時代は、フィリピンまでメイン・ルートとしてスペインの船が来ていましたから、地理的な情報をもっている船乗りはいたでしよう。フィリピンでは見つかってしまうから、近くのどこかで埋めてしまおうかとか…。故買人、買ってくれる組織や人が見つかるまでは、どこかに隠しておく必要がありますから、そういう可能性がなかったとは私は言えないと思います。誰がどんな船でどこへ持ってきたかは謎で、お互いに秘密に探ろうとしていると思います。

ステンカ・ラージンの船のことですが、これは17世紀の中ごろにドン河やボルガ河を往復して、カスピ海沿岸にまで荒掠したといいまして、船の技術を持っていること、優れた船隊を使って姫をさらったり略奪しながら、集団で掠奪していることから見ても、立派な海賊です。これは政府から大軍を差し向けられて制圧される。結局、国家勢力と対立していたわけで、海賊行為ととらえて差し支えないでしょう。海以外で、海賊行為を行った者は多く、日本でも古代以来、琵琶湖に「湖賊」と呼ばれた海賊集団がありました。

司会:ほかに何かお聞きになりたい方、ございますか。

質問:どうもありがとうございます。楽しかったイベントです。このジョリーロジャーという名前を久しぶりにこの場面で見たんです。

 

 

 

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