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ところが、いまの日本の国で日本の物資を運んでいる船のほとんど大部分が、表面上は日本の船ではありません。国際的な登録上、パナマとかバハマとか、リベリアとかの国籍の船に、日本の貨物が積まれて運ばれます。私が外国の海軍との間でトラブルを生じた時は、小なりとも私の船は日本の国籍のヨットでした。ですから、何かあれば日本の国の庇護を受けられます。国交はありませんが相手の国に対して、うちの国民が、うちの国の船が危害を受けましたという抗議はでき、国際法規に則った処理がなされます。

ところが、被害を受けた船が、事実上は日本資本の支配するものではあっても、パナマの国籍だったり、リベリアの国籍であったり、バハマの国籍であると、日本人の船長が乗っていても日本の主権がどうなるか、私は専門ではありませんが問題になると思います。また、被害を受けた海域が公海上であればともかく、ある国の領海であった場合は、その国の主権も問題もからんできます。そこで国連なのでしょうが、国民生活の安全面から考えるべき問題です。私は、80年代から90年代の初期にかけて、全日本海員組合というところで、船員の団体の中央団体で教宣の仕事をしていましたが、そのときから、組合員の基本的な権利の問題として、この問題は常に頭にありました。国籍がこのようであると同時に、乗っている船員も、20何人のうちの数人、4人、5人、3人という数の日本人しか乗っていないのです。国民生活を支える海運という産業の、安全セキュリティーの問題でもあるわけです。

そうすると、日本の国家主権としてその海賊行為に対してどうするかという問題は、大変微妙な問題が出てくるのではないかと私は考えています。これがご質問の答になったかどうかわかりませんが、その問題が一つあります。

もう一つは、海賊の成立に関わる問題です。彼らの拠点がどこにあるのか。この通信の発達した、情報の発達した時代にわからないのです。彼らは海上技術集団として数万トンの船を乗っ取るのです。私は船員教育を受けていますが、あの船を乗っ取ってどこかに持っていく技術は持っていません。あるいは私の仲間の数人でやったとしても、持っていません。それが香港に現れたり、プーケットの沖に現れたりするのですから、乗っ取った船を自分たちで動かすだけの技術を持っています。これは大変なことだと思います。

それから情報の問題があります。これだけ情報が発達した中で、どこに行ったかわからない。香港の沖に現れましたと新聞に出る。どこどこに現れましたと新聞に出る。そういう具合に、大変情報が少ない。その盲点をついていると思います。もう一つは、故買組織です。あまり商品価値のないようなものを何パーセントかちゃんと売りさばいていますから、これは故買組織があるのでしよう。

 

 

 

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