日本財団 図書館


成立の条件というのは、だいたいこんなところです。

カリブ海の海賊時代の後期に、どこの庇護も受けないゲリラ海賊の親分で、バーソロミュー・ローバーツというものすごく精力的なモラールの高い海賊がいました。技術も優れているし、モラールも高い。彼の故買ルートがどうなっていたか、まだよく調べがつきませんけど、大胆な海賊です。売り払い先がないときは、どうするか。キッド船長が宝を埋めたと言う、有名な海賊の埋蔵宝話がありますね。下手に売って、さきほどの例のように、脅されて取られてしまうよりは、きちんとした売り場所がわかるまで、わかりやすい所に埋めておくのがいいわけです。キャプテン・キッドが財宝を島に埋めたという言い伝えがあるのは当然の話で、いまでも掘りに行く人がいます。

ローバーツの売りさばき所はまだはっきりしませんが、ゲリラ海賊の集団として、彼がやったことで一番顕著なことは、自分たちで法律を作ったことです。バイキングにも法律はありました。むやみに人を殺してはいけない。歯向かう者以外は殺さない。女性や子どもは手にかけない。どういうものは取ってはいけない、というルールがありました。ところが海賊が華やかなりしカリブ海の時代に、どこの庇護も受けないで、国の保護も受けない、総督の許しも得ない。もう国家が海賊を庇護するような時代ではなくなっていましたが、彼は、荒らしまわって、40歳までの生涯に400隻の船を略奪した、というのだから大変な統率力と技術です。やり方も優れています。

彼は十一カ条の掟を作りました。11項目を並べていると時間がかかってしまうので、ここでは申し上げませんが、分配の方法、略奪のやり方、モラル、これは意欲のほうのモラールではなくて海賊の規範です。やってはいけないことを、こと細かく決めます。船長と舵取りの分配は標準の2倍であるとか、航海士は1.2倍であるとか、そのように決めます。人の殺し方まで決めていたというのですが、これは文章に残っていません。

最後には彼は、あまりに略奪の被害が甚大なので、とうとうイギリスの艦隊に取り囲まれて、捕まって刑に処せられます。40歳でした。死ぬときの言葉がいいんです。

「短い生涯、愉快に生きたぜ」

というものです。

これは、苛酷な時代に生を受けた人間の、究極の喜びだと思います。そう言って彼は処刑され、死んでいった、と言われています。

最後に、もう少し前の時代の人ですが、かわいい、美しい女海賊が2人。アン・ボニー、メアリ・リードという2人の海賊が歴史に残っています。この人たちも、大変個性的な言葉を残しています。この女性の残した怖い言葉を、現代の男性たちに捧げて、海賊の第1回の話を終わりたいと思います。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION