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そういうかたちになると、地中海ではあとで回教徒とキリスト教徒で海戦が行われたりしますが、個人的、地域的な海賊の時代は去っていきます。武器も大砲ができたり、銃ができたりして、海賊という個人的な力で対抗できるようなものがなくなってきます。そうすると狭い地域では海域の支配もできなくなる。庇護を与えても国と国がもっと大規模な戦争をやるようになってしまうと、海賊の生き残る余地がなくなってきます。必然的に、まだ国家的な統制力の希薄な西インド諸島へ、海賊の拠点は移っていきます。

国際的な庇護の下で行われるプライヴァティアというのが、増田さんのご講義で詳しく語られると思いますが、カリブはこういう段階のものです。つまり、発見したのはスペイン人ですから、まず、スペインの物が行き来します。ところがイギリスもフランスもオランダもポルトガルも新しい海域へ進出したり、交易をやりたい。それで行こうとすると、この中に入ってきた人間は、全部海賊とみなせと、不法侵入である、と言ってまずスペイン人に捕まりますが、そんなことではやっていられない、とスペインに対抗します。

これが国家の庇護を得たプライヴァティアと称するカリブ海の中心的な海賊の発展形態です。私としては、こういう発展段階の上に出てきたという基本的なことをご理解いただければ充分です。

この時代から、いわゆる華やかな海賊の時代、ドクロの旗を掲げた海賊どもの活躍が始まるわけです。ちなみに申し上げておくと、最初に黒いドクロの旗を掲げたのは、このスペインの支配が我慢ならないと出て行ったフランスの海賊だったと言われています。16世紀にフランスの海賊が使い始めたと言われています。それまでは自分の領主の旗だとか、自分の国の旗だとか、あるいはキリスト教徒ならば十字の旗だとか、イスラム教徒ならば半月旗などを揚げて活動しました。絵にも出てきます。カリブ海時代の前までは、例えば地中海のマルタ島の騎士団は、十字の旗を掲げています。それに対抗して略奪しようとしているのは、三日月、クレッセントで、イスラム教徒の旗を掲げています。その次のカリブ海時代になると海賊旗が出てくるわけです。というわけで、この時代はあとで詳しくご講義がありますから、ここでは、最後の項目に移りましょう。

 

 

 

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