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もう一つ、ついでに申し上げておくと、モラールというか、要するにやりぬくんだという意欲、ガッツです。俺は海賊としてやりぬくんだというガッツがないと、どうもダメみたいです。それは技術力の一つの変形だと思います。そのへんにローマ時代を生き抜けなかった海賊勢力の統率者としての「二代目」の決断力のなさみたいなものを、あとになっても言う人が出てきます。

時代が下がって、10世紀以降のバイキングの時代になりますと、完全に遠征略奪のかたちをとっていますが、その手法はもっと現代的になりまして、遠征した先に海域支配を確立します。これは複合的なものです。バイキングの活動はあとでお話しいただけますので、そのときに詳しく、具体的なことが出てくると思いますが、そういうかたちで発展的なものであることを、ここではご理解をしておいていただきたいと思います。

中で一ついいことを言っている人がいます。これは船を持って自分の故国を離れて攻めて行きますが、先ほど申し上げたように一つの船の上で自己完結をしなければならない。一つの船が自分の支配地域なのです。ですから船長が絶対的な権限を持っていますが、バイキングというのはそれぞれの役柄が大変はっきりしていまして、あまり1人の人間が権力を持たなかった集団だとされています。

たとえば、フランスにノルマンディー地方というのがあります。あれはノルマン人が開拓した場所という意味だそうです。デンマークから出た黒いバイキングという一派がいます。これはだいたいフランス、ベルギー、あのあたりの沿岸を荒らす人たちです。それから白いバイキングといってノルウェーから出る人たちです。これは金髪だから白いと言われているのでしようか。顔が白いからなんでしょうか。彼らは、イギリスの北部やアイスランドのほうへ遠征します。

それからもう一つの人たちは、バルト海沿岸のスウェーデンの人たちです。これは金色のバイキングと言われています。バルト海沿岸の北側のところから、あるいはエルベ川をさかのぼったり、ドニエプル川を溯ったりして、ロシアのほうまで遠征します。

この三つの分布があるのですが、ここでお話したいのはノルマンディー地方に国を作ったデンマークの人たちのことです。最初にそこに攻めて行って、フランスの領主だった王様から土地を与えられるのです。「お前たちがここを支配していいよ」ということになるのです。その首領が大変勇猛果敢な男で、ロロという名前です。

このロロさんはバイキングの首領で大変に体の大きい、馬に乗ったら馬がつぶれてしまうというぐらい、体の大きい人だったらしいです。「ここはお前らの交易地にしてもいいよ。ここは自由にやりなさい」というお墨付きをフランスの王様からいただきます。

 

 

 

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